Complete text -- "レッド・ブルについての人々の噂 "

22 February

レッド・ブルについての人々の噂



「レッド・ブルはと言えば、耳にしたことよりも分かっていることの
方がより少ないのです。何故ならばあまりにも様々の逸話が伝えられ、
その各々が矛盾するものであるからです。牡牛は実在する、牡牛は幽
霊だ、牡牛の正体はハガード王自身で、日が落ちた時の彼の正体だ、
という具合です。牡牛はハガード王の来る以前からこの国にいた、と
いう説もあれば、ハガード王と共にこの国に来た、という説もあるし、
ハガード王のもとに後に牡牛がやってきた、という説もある。牡牛は
略奪や反逆からハガード王を守っていて、兵隊達を武装する経費を省
いてくれている、という者もあれば、城の本当の主人は牡牛で、ハガ
ード王は捕われの身に過ぎない、という者もいる。牡牛の正体は悪魔
で、ハガ−ド王はそいつに魂を売ったのだ、という意見もあるし、こ
の牡牛を手に入れる代償としてハガード王は魂を売ったのだ、という
意見もある。牡牛を支配しているのがハガード王だ、とも言われれば、
牡牛の方がハガード王を支配している、とも言われている。

これがシュメンドリックがユニコーンに語ったレッド・ブルについての人々の噂でしたが、
最初にこの怪物の名をユニコーンに語った蝶々のセリフも、矛盾だらけの意味と記述の混淆体
から掬い取ったような、曖昧極まりないものでした。
ある意味でユニコーンと対照的でもあり、またある意味で極めて近しいものでもあり得るのが、
レッド・ブルという名で呼ばれる何物かだったのでした。
この怪物の示す曖昧性あるいは不定性という特質については、以下のリンクに発展的論考があります。

The Avaricious Stoist of A Barren Kingdom
https://www.academia.edu/7899846/The_Avaricious_Stoist_of_A_Barren_Kingdom

18:28:59 | antifantasy2 | | TrackBacks
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