Complete text -- "イオンタウン講演会"

23 February

イオンタウン講演会

レッドブルとユニコーンー申命記の記載

欽定訳聖書では、人々を追い立てていったのはユニコーンだったと書かれている



 最初にこの不可思議な怪獣の名が語られたのは、物語の冒頭あたり、これまで長い間自分の守ってきた常春の森を離れて、外の世界へと旅立ったばかりのユニコーンが路上で出会った、意味なく歌を口ずさむことしか知らない、気の触れたような蝶によってだった(1)。ユニコーンの尋ねた質問をはぐらかすように、とりとめの無い戯言を延々と繰り返した後に、漸く彼は先程尋ねられたユニコーンの問いに答えるかのごとく、遠い昔に世界のあらゆるところから失われてしまった他のユニコーン達の消息と、その運命的な事件に関与したというレッド・ブルという不可思議な存在について語ったのである。

You can find your people if you are brave. They passed down all the roads long ago, and the Red Bull ran close behind them and covered their footprints.
p. 15

勇気を失うことが無ければ、失われた仲間達を見つけ出すことができます。彼等は遠い昔に世界のあらゆる道を駆け去り、その後をレッド・ブルが追って、彼等の足跡を消し去ってしまったのです。

しかしこの風のように希薄で極楽蜻蛉そのもののように脳天気な蝶は、助言者としてはいささか当てにならない、むしろはなはだ頼りないと言うべき軽佻浮薄な情報提供者なのである。何故ならば、“レッド・ブル”という始めて耳にする名について、改めて尋ねたユニコーンに対する蝶の答えは、以下のようなものであったからだ。

“His firstling bull has majesty, and his horns are the horns of a wild ox. With them he shall push the peoples, all of them, to the ends of the earth.”
p. 15

「彼の第一子は王となり、その角は野牛の角。これを用いて牡牛は、全ての民を地の果てまで追いやるであろう。」

 実は彼のこの言葉もやはり、ユニコーンの問いに答えて語ったものとは、必ずしも言い難いものなのだ。これはひょっとしたら、旧約聖書の一つ「申命記」(Deuteronomy)33章17節に、エジプトを脱出したモーセに対して神によってなされた予言として記載されている言葉の、あるがままの引用に過ぎないものであるかもしれないからである。


ユニコーンとレッドブルの交換記述あるいは同一性を暗示する要素については、『アンチファンタシーというファンタシー2』の第7章「レッド・ブル―無知と盲目の影」に掘り下げた考察があります。

以下のリンクでも確認できます。
https://www.academia.edu/7899655/Red_Bull_The_Shadow_of_Ignorance_and_Blindness
23:25:03 | antifantasy2 | | TrackBacks
Comments
コメントがありません
Add Comments
:

:

トラックバック