Complete text -- "2018 Game Study Muvluv Alternative"

19 October

2018 Game Study Muvluv Alternative

Game Study Muv-luv Alternative

可能世界論としてのコンピュータ・ゲーム研究


講義シラバスより
 ゲーム作品『マブラヴALTERNATIVE』を対象にして、コンピュータ画面上に現出した映像表現の特質と、そこに平行して用いられている活字や音声等の多元的な表現媒体が示唆する仮構世界表現手段の拡大と変容の可能性と実相を、コンピュータ・ゲームというジャンルあるいは世界の持つ潜在的意味性に対する考察として検証していく
 インタラクティブに操作されると同時に鑑賞対象ともなる視覚・総合芸術表現として提示された、ストーリーと記号的概念構造を重ね合わせて保持する特有の仮構の一種である“ビジュアル・ノベル”としてのゲームを実際にプレイすることにより、その新しいジャンルとしての表現の特質や、そこに秘められた独自の主題性についての哲学的、科学論的論考の可能性を模索していく。

【授業計画】
1 回
“あいとゆうきのおとぎばなし”というジャンルカテゴリー、
「お約束的展開大前提御都合主義上等の超王道恋愛AVG」は擬装?
2 回
“インタラクティブ・ノベル”の特質と可能性について、
双方向性と網羅的試行からフィクション世界の宇宙論的解釈を模索
3 回
平行宇宙論と多世界解釈における人格の同一性問題、
キャラクターの貫世界的同定に関わるhaecceity とquiddity の問題
4 回
“コヒーレンス”、“デコヒーレンス”とバタフライ効果、
観測効果と確率関数の収束、“存在確率”としての原形質的意義性
5 回
主題研究:主観世界と客観世界の捻転的合一の可能性、
内宇宙と外宇宙の重ね合わせを示唆する形而上学的宇宙論
6 回
グロテスクとエロティシズムとナンセンス再考、
エロへの逃避と、エロからの逃避に対する峻厳なる拒絶の意思表明
7 回
全と個の関係性再考、運命性と自己同一性の相関、
世界創成と個人存在を関連づける全方位的意味性賦与のメカニズム
8 回
ループと永劫回帰と実存、時間性の呪縛に対する挑戦、
運命愛と永遠性に対する渇望、刹那と無限、多義性と回帰性
9 回
分岐する世界と複数化する「私」、意識と存在/記憶と知覚、
対応と相関、モナドロジー再考
10 回
高潔と悪徳、絶対悪の存在と闘争の意味の再検証、
正義と必要悪の相克、絶対倫理とレゾン・デートル
11回
自己犠牲と生け贄と贖罪のパラドクス、
倫理のディレムマと意味座標平面の次元拡張
12 回
マトリクスと平行宇宙と多義性の原形質、
素粒子の発現可能性の順列組み合わせ的網羅的可能態の宇宙像
13 回
代替候補の可能世界像を提示する神話・伝説とファンタシー、
仮構世界の改変と挿話の付加
14 回
創造的論評の試み、妄想と悪乗りとしての鑑賞と思考、
模造と改作という創造行為、考察と分析という創造行為
15 回
個々における創造的関与の様々な試行、
パロディー、コスプレ、作品紹介ヴィデオ・クリップ作成等

『マブラヴ』のジャンル
エロゲー―美少女ゲーム ジャンル・カテゴリーについて


良く用いられる略称
 ADV:アドベンチャー・ゲーム
 SLG:シミュレーション・ゲーム
 ACT:アクション・ゲーム
 RPG:ロールプレイング・ゲーム
 TBL:テーブル・ゲーム
 STG:シューティング・ゲーム

具体例(メーカーの自己申告)
『Fate/stay night』:伝奇活劇ヴィジュアルノベル
『戦国ランス』:地域制圧型SLG
『つよきす』:強気っ娘攻略ADV
『To Heart 2 XXRATED』:ビジュアルノベル
『マブラブオルタネイティブ』:あいとゆうきのおとぎばなし
『D. C. ~ダ・カーポ』:こそばゆい学園恋愛ADV
『この青空に約束を』:学園ADV
『夜明け前より瑠璃色な』:月のお姫様ホームステイADV
『君が望む永遠』:多重恋愛ADV
『大番長』:地域制圧型SLG
『恋姫+無双』:妄想満載煩悩爆発純愛歴史ADV
『遥かに仰ぎ、麗しの』:ADV
『プリズム・アーク』:S RPG style ADV
『ef- the first tale』:インタラクティブ・ノベル
『Really? Really?』:想い出修復ADV
『ここより、はるか』:新たな世界で大切な何かを掴み取るADV
『彼女×彼女×彼女』:同居型エロ萌えADV
『CHAOS; HEAD』:妄想科学ノベル

『マブラヴ』の場合は、ネットでは「超王道学園アドベンチャー」となってましたが、専門雑誌の記載では“あいとゆうきのおとぎばなし”、さらにパッケージには「お約束的展開大前提御都合主義上等の超王道恋愛AVG」とあったのでした。

課題 夕呼博士の検索結果
 国連軍横浜基地司令官補佐の香月夕呼は、突然基地に表れた白銀武について、コンピュータで検索した結果どのような事実を確認して、彼の言葉を信じることにしたのか?後のストーリーの展開から、この確かな理由を推し量ることができるはずです。これは、この作品の中心となる主題「平行宇宙」の存在原理と密接に連なる重要条件でもあるからです。

平行宇宙内存在物
 量子論的存在解釈に従って網羅的に分岐した平行宇宙を形成する集合の元となる「存在」を考える時、「黒田」でも「和洋」でも「赤」でも「カンニング」でも何でもいいから、何か命名をした無限のセルを表示することができるエクセルの表を考えます。ロール・プレイング・ゲームのキャラ設定の場合と同様にそのセルに「身長」だの「体重」だの「血液型」だの「好きなデザート」だの「苦手な教科」だのと並んで「存在しない」とか「仮構上の疑似存在」だとか、ありとあらゆる属性となる項目を付け加えることができることとします。一つの平行宇宙を形成する元となる条件項目として、さらにこのように無限に記述可能な属性細目を元として持ち得る「存在」あるいは「意味」がある訳です。このような宇宙記述モデルにおいては、ある一つの人格(ここではマトリクスで表記されている)が「貫世界的」に存在することが前提とされていることになります。そうなるとこれまで「個人」とか「同一性」という概念で理解されていたものが、全く異なった様相のもとに再考されなければならなくなることを理解して下さい。この案件がこの後『マブラヴ』の中で取り分け興味深い状況を現出することとなるのです。
 このような記述モデルの具体例を一つ紹介しておきます。講座担当者が意味も無く「アリス・ゲーム」と名付けた、健全な論理記述の妄想悪乗り一人遊びです。
Alice Game 2
https://www.academia.edu/9763948/Alice_Game_2

「アリス・ゲーム」記入例
「アリス・ゲーム」の記入例をアップしておきます。
ここに暗示されているような行列的な存在物の属性把握の試みが、
ニュートン的な物質粒子と粒子間の作用を前提とした「力学」による
世界記述モデルに代替する、統括的宇宙原理の記述手法の一つとなっていることを確かめておいて下さい。
Alice Game 2 Model Answer
https://www.academia.edu/9763982/Alice_Game_2_Model_Answer


成長?レベルアップ?
 『マブラヴ』で最初の平行世界にワープした主人公白銀武は精神的にも未熟で、知能・体力共に低レベルの「へたれ」でした。散々仲間の訓練生達の足を引っ張り、みんなに教え導いてもらいながらなんとか経験値を高めていったのでした。『マブラヴ・オルタネイティブ』の白銀はさらにもう一つの平行世界にワープし、しかもこれまでの体力と知力と経験の記憶の大部分を保持したままスタートを切り直す結果となっています。ロール・プレイング・ゲームによくあるように、パーティが全滅した後の再ゲームでは、前回の試行が再プレイ後の地力として反映されているのです。しかしこのゲームでは、その自覚が主人公に対するプレッシャーとなり、行動範囲の制約を及ぼす桎梏ともなります。さらに、成長して仲間の訓練生達の尊敬の念を集める主人公が世界救済の使命感に燃えて語ったり考えたりしたことが、必ずしも全て正しい思考や判断であったと結論づけられる訳でもないのです。例えば彩峰のさりげない突っ込みなどに見られるように、訓練生達一人一人が実は、白銀の判断に疑義を唱える根拠となり得るような深い背景としがらみを背負っているからなのです。このゲームは、決してお約束事の安易な正解や正義を確証させてくれるものではありません。プレイヤーは重く、苦しく、このゲームの提示する問題性につき合わされていくことになるのです。覚悟しておいて下さいね。


ゲーム作品のメタフィクション的構造 テキストの記述より
 仮構世界的意味性を一定水準で完結させるだけの説得力を備えたエッチシーンが導かれた後も、ゲームのプレイ自体がそこで終結することは実は稀である。多くの場合ゲーム世界はそこから“裏ワールド”へと進展し、既に体験した筈の同形のストーリーを文字通り新たな視点から再び辿り直して拡張次元における反転的世界描像を検証し直すこととなる。[i]この手順は通例攻略対象となり得るヒロイン毎に用意されており、数度に渡って繰り返されることが普通である。その結果得られた新たな統括的仮構世界描像は、時に次元超出的な秘匿された世界解式の存在を確証する跳躍的手順をも示すこととなるのである。[ii]各ヒロイン個々に対する個別の具体的攻略手順であると共に、世界レベルにおいては分岐した無数の平行世界の内実の網羅的な経験による検証と、さらに意識存在にとって世界の原理的意味性賦与を支配する情報次元の展開範囲の延展をも暗示する、従来の芸術作品においてこれまでかつて具現され得なかった新様式の構築が実現されていると看做し得る顕著な特質がこの辺りにある。[iii]

[i]『マブラヴ』、(âge、吉宗鋼紀、2003)においては、1次世界の典型的な美少女攻略エロゲーである「EXTRA」編でそれぞれのヒロインの攻略を果たすことによって特定条件を満たすと、2次世界である「UNLIMITED」編をプレイすることが出来るようになる。がらりと趣を変えたこの裏ワールドでは、エイリアンの侵攻を受けた地球諸国が人類の存亡を賭けての熾烈な戦いを強いられることになるが、主人公/プレイヤーは教養小説的な重厚な枠組みの中で、世界の問題をそのまま個人の課題として引き受けることの切実な意味を体感することとなる。幻想を排した自分自身の本来の姿の再発見と世界の救済と美少女達とのエッチが見事に同一次元上に展開することになっているのが、この「ご都合主義結構」とうたわれたエロゲーの実体なのである。
[ii]『マブラヴ』の続編『マブラヴオルタネイティブ』(âge、吉宗鋼紀、2006)では、前作にあったヒロイン毎の個別ルートというものは存在せず、基本的には地球外生命体の侵略者であるBETAとの戦いという一本道でストーリーが進行していくが、その代わりに平行世界間移動とタイム・ループの題材が個人の同一性問題に深く関わってくることとなる。個人存在はその背後に全体性としての世界の全てを背負う、言わば世界の基軸そのものとも見なし得る意識単位となるからである。その結果新たな主題として浮上するのが、主人公白銀武及び彼の恋人であるヒロイン鑑純夏の貫世界的人格同定と、空間座標と個体延長の断絶を超えるばかりか複写物に対してさえも成り立つ、類比的相当性次元におけるメタ人格同一性なのである。白銀武は別世界の鑑純夏の意思の影響の許に“因果導体”となり、複数の平行世界を結びつけるインターフェイスの役割を果たすこととなる。その結果平行世界間の因果勾配を招来して異世界への情報伝播を実現することによって、“平行世界間エントロピー増大則”ともいうべき超宇宙論的仮説を示唆する間世界的情報移動現象が展開されるのである。本来なら因果関係を持ち得ない筈の多世界間の情報遷移を体現するこの二人の、“相当性条件における人格同一性”という経験則的理解の枠を大きく超えた斬新な発想の提示がなされている『マブラヴオルタネイティブ』の“エロゲー”としての新機軸は、“ダッチワイフとのエッチが大団円を導く”という人外属性的萌え展開である。
[iii]『猫撫でディストーション』では、隣家の少女とのエッチを体験する攻略ルートにおいては主人公が世界に対する心霊的把握に関して得るものは何一つ無く、主題的側面においては“バッドエンド”の収束となると思われる。一方飼い猫、母親、姉、妹とのエッチが導かれるそれぞれの攻略ルートは、量子論理的存在解釈によって“獣姦”や“近親相姦”の禁忌侵犯を逃れることができるばかりか、クオリア感覚を喪失して世界の疎外者となっていた主人公が家族のそれぞれの人格(ペルソナ)の裏面にある神霊的位相を再発見することによって、人間一般と世界そのものに対する霊的理解を深めることに成功するという、至福の結果が得られるのである。
 一つだけ気になるのは、ゲーム世界攻略手順における条件的特質として、未だ未開拓のルートが存在するか否かが容易に判別できないことから、一家の残りの人格である父親及び自分自身とのエッチという収束ルートが存在するかどうかが判然としないことである。このゲーム作品の保持する純思弁的な主題としては、自分自身とのエッチによって発見されるものが最も重要な真理の顕現となると思われるからである。
追記
 本作の続編『猫撫でディストーションExodus』(2012)のメインパートとなる「Exodus」編においては、エロゲー的手法でエッチの対象とすることが困難であった父親と自分自身を相手に、作品世界の主題的意味性を決定する重要なエピソードが展開されることになっていた。さらに平行してプレイすることができるキャラクター毎の個別パートにおいては、家族外キャラクターである柚を対象にした攻略ルートが、平行宇宙における貫世界的人格同定を中心主題とするこのゲーム作品の多義的な意味性構築機構を決定する重要な軸の一つとして機能していたのであった。様々な意味で本編に対する補完的要素を充当する結果となっているこの“続編”に対するドラマツルギー的評価には、さらなる検討が要請されていると思われる。

タイムワープとパラレルワールドの基本となる前提知識
力学と永劫回帰
 ニュートン力学が代表する科学思想においては、世界に招来するあらゆる事象は、最終的に物質を形成する基礎単位である個々の粒子の運動と配列によって決定することとされる。もしも現在世界に存在する限りの全ての物質粒子とそれらの位置と運動を全能の神のような存在が把握するとしたならば、未来の全ては予測に従った厳密な結果をもたらすだけのものとなるに違いない。これが「決定論的宇宙観」と呼ばれる現実認識の一つの形である。さらに、もしも世界の大きさが有限であり、物質構成単位となる粒子の数もまた有限であるならば、その順列組み合わせの数はいかに莫大なものであろうとも、ある有限の値を取ることが当然予想されるだろう。ということは、全ての可能性の分岐を経験してしまった後の世界は、必ずや以前に経験したのと全く変わらない状態を再び繰り返すことを条件づけられていることになる。永遠の時間の流れの中で、世界と世界構成要素の各々は、自身の発現形を選択する過程において、変化の無い繰り返しのループから逃れる術を持たないのである。これは存在と行動の意味自体を完全に否定してしまう冷徹な客観的世界の実相を示す残酷な教説と考えられるものであり、また「個」としての自覚を持つ意識の主体としては、考え得る限りの最も忌まわしい現実認識の形であるとも思われるものである。ニーチェはこの考えを「永劫回帰」と呼んだ。
 『マブラヴ』の場合のように、多世界の存在と異世界へのリープあるいは過去への逆行が認められる世界を支配する物理法則とは、ニュートン力学のいかなる前提部分をどのように修正した結果得容認されることになるものだろうか。

特異点
 ニュートンの構想した宇宙観においては、あらゆる物質がその固有の質量の大きさに比例する力(万有引力)で互いに引きつけ合っているという根本原理を採用しながら、当然の帰結であるはずの宇宙にある全ての物質がある一点に引き寄せられて凝集するという可能性が排除されていたのは、無限の広がりを持つ空間における「釣り合い」という実は誤った仮説が信じられていたためでした。キリスト教の教義である始まりと終わりのある時間の7000年という有限性の延長範囲は、すでに18世紀、19世紀の知識人にとっては廃れた偽説でしかなかったのでしょう。空間的・時間的無限を前提として受け入れる限り、機械論的因果関係に従う決定論的運命観は異論の余地の無いものとして主張されることになります。現在支配的なものとなっている、始まりと終わりの存在を許容する宇宙論は、厳密な意味での「科学思想」が容認することを拒否していた「特異点」をむしろ積極的に採用する「非科学的」要因を備えた思想であるとも言えます。空間における極大と極小の「特異点」において異次元空間への連接があり得るように、時間次元においても同等の特異点が存在することを予期しているのが、現在の世界の我々にとってすでに当たり前の時空認識なのです。
 質量点としての物質粒子が世界を構成する基礎単位であるとすれば、ニュートンが仮定したように全ての存在物が引力の支配を受けているのが当たり前となります。しかしそのような特性を持つ「物質」の基幹要因として考えられていた「原子」を構成する部分的要素として「素粒子」の存在があらたに認められ、その「素粒子」は原子がそうであったように特定の「質量」を持っているわけではなく、時に原子に質量を与える要因であったり、あるいは保持する質量はゼロでありながら原子の構成要素として機能していたり、さらにまた可能性としてはマイナスの質量を持つ「素粒子」さえもが存在することが予測され得ることとなった時、「重力」と「もの(質量)」という概念そのものの再検討が必要とされることになりました。つまり質量を質量足らしめる「情報(意味)」という基礎要因の存在が新たに認められねばならないこととなったのです。時間軸の延長上に個別の存在物としての座標を維持しているもの、あるいは空間的連続性を保ち繋がった一塊のものであるという条件以外にも、存在の個別性がむしろその意義性や「形状」あるいは「性質」という条件のみにおいて確かに「同一性」として判断されるという、より踏み込んだ界面での「同定条件」の存在が考えられることとなる訳です。白金武の恋人の鑑純夏の「鑑純夏」性は、そのようなものとしてこの後『マブラヴ・オルタネイティブ』に登場してくることになります。

存在概念が変革される  下の例題で考えてみてください
ホグワーツ学院魔術学原論 中間試験問題

 以下に列挙する事象は、すべて一つの魔術的システム理論に関連して生起する現象である。これらの依拠する基幹システムの内実と、各々の事象の保持する相関について「同一性」という概念の検証を通して指摘せよ。
 5寸釘を突き立てる呪い人形は、相手の姿形を型どったものを用いる。
 写真を撮られると魂を抜かれる。
 成金や政治家は銅像を建てたがる。
 王や権力者は硬貨や紙幣に自らの肖像を刻印する。

創造的記述 課題

「二巡目」を意識しながら思考/行動をおこなっている場面を構想して自由な記述を試みよ。試験/面接/告白場面等、過去の経験とそのやり直しを行いつつある自覚がいかなる世界超出感覚を現出し得るかに留意して、印象深い具体的な詳細記述の可能性を模索せよ。


ループ構造世界
平行世界の主題はアニメやゲームにしばしば導入されていますが、ループして2巡目、3巡目が現出している例はそれ程多くはないようです。小説、マンガ、アニメ、ゲーム等を含めて~順目が語られている作品がありましたら、申告してみてください。





平行宇宙 関連概念研究課題
次の各々の「魔物」(demon)が示唆する科学思想との関連を検証しなさい。

ソクラテスのダイモニオン

ラプラスの魔
 『ローゼンメイデン』で言及されていました。

マクスウェルの魔
 『エル・カザド』で解説されていました。

アニメ、ゲーム等で言及されている例がありましたら申告してください。


直列と並列
 主人公白銀と夕呼博士によってなされていた、戦術機の操作プログラムの改良案についての会話の中で参照された、AIと人間知能のシステム理論的な質の違いが「並列」と「直列」でした。ここでは「並列処理」(parallel)と「直列処理」(serial)というアルゴリズム概念の相違が指摘され、さらに観察/対応対象として有限の範囲が規定されているゲーム内環境の場合と、無限に解放された環境変化が想定される現実環境の場合の重大な異なりが考察されていました。これらは実は、身近なコンピュータの機能の応用を通して容易く確認することができるものです。階層別に整理したフォルダの中に通し番号を付けて1、2、3…と単なる数字をファイル名として与えて保存していった場合では、二桁の10や3桁の100が含まれることになった時点で、コンピュータはこれらを一連の量的違いを判断することのできる数字であると認識することができなくなります。100枚以内であれば最初から000、001、002、のように3桁の数字として制約された情報により、フォルダ内の全てのファイルを統一的に関連づけておく必要があるのです。人間知性は明らかに無限対応なので、全体を見ずに部分情報のみを参考にして支障無く思考を組み立てていくことができます。このように人間の知能は、コンピュータが行うような演算アルゴリズムとは全く異なる独特の思考方法を用いて活動を行っていることが理解されます。ここに確認したようなシステム理論的観点から既存の様々な議論を振り返ってみると、様々な発見が得られるはずです。応用としては、「線的」(linear)という概念、「スカラー数」という概念などをこれらの議論に反映させてみると興味深い発見が得られることでしょう。
 社会管理の方策の手段として採用された「並列化」と、思考アルゴリズムのモデルの一つである「並列処理」の相違と関連を理解しておきましょう。
 さらにもう一つ、「開放系」と「閉鎖系」というシステム理論的概念にも注目しておいて下さい。夕呼と白金の議論と関わる実例として、人間の大脳の働きと小脳・間脳その他の神経組織との関連、および永野護の『ファイブスター・ストーリーズ』に語られた、モーターヘッドを操る際の騎士とファティマの関係を考察してみて下さい。

並列と直列  具体例
 「並列」と「直列」という対照的な概念を、他の分野における関連語句に置き換えて対比してみることにします。「並列側」と「直列側」に分けられたそれぞれの概念が示唆する、統合的宇宙解釈上の具体的な問題点を確認することができるでしょう。
 並列      ー    直列
 多義性     ー    一意性
 重ね合わせ   ー    単独存在/現象
 デコヒーレンス  ー   コヒーレンス
 波動      ー    粒子
「人間知性」の実像と宇宙の基幹的場の原理的存在属性は、必ずしもこれまで科学的見地から信じられて来たような「直列」的なものではなさそうなのです。


メタ構造性
 過去に時間を遡る、あるいは並行世界の時間的ラグのある別世界にリープするという『マブラヴオルタネイティブ』の背景設定は、ゲームをプレイヤーが操作すると共に追体験するという外的構造がゲーム内設定にも組み込まれているという点で、興味深いメタ的構造特質を具現しています。プレイヤーが再プレイを繰り返すことによりゲーム展開に関する情報の蓄積を得て戦略面での優位性を獲得していくのみならず、経験値がそのまま体力にも反映されてレベルや戦力を増強する構造特質が、そのままゲーム世界内にも反映されている訳です。このメタ構造が、ゲームの経過をセーブして意図的にセーブ地点への移動を試みることがゲーム世界内で有効な選択肢として用意されているのが、『世界の果てで愛を唄う少女Yu-No』でした。ストーリーばかりでなくゲームとしてのプレイ方法面の設定の構造性に着目してそれぞれのゲーム作品の構造特質と主題性を考察してみると、時に貴重な発見が得られることがあります。

 白銀武は、二度目のターンの世界の中で「今」を生きながら、同時にゲーム作品を外部から観るプレイヤーと同列の枠外の視点から、自分と周囲の環境を捉えるメタ的視点を自覚して思考を巡らせています。しかしこれと似た現実離脱的感覚というのは、実は我々も実際に似たような状況を経験していることがあるものです。このような「メタ意識」が、時として未来予知をもたらしたり『内なる声」として運命を導く超越的感覚の源であったりするのかもしれません。現在物理学と心理学の統合的視点から、このような「意識」のあり方を考察することの必要性が様々に指摘されています。James Beichler の主張する宇宙全体に漲る全ての根源となる「意識」や、Jack Sarfattiの唱える未来から過去へと及ぼされる「メタ意識」の及ぼす影響などがその例です。
 以下はアニメ『Madlax』論の中で用いられた考察の抜粋です。
 この現象生成機構は、ビッグ・バンの起因となるエネルギー発現という特異点を説明する手段を持たないため、かつて“神の一撃”という言葉を用いて記述されることもあった宇宙創世の始動因を、汎宇宙的な“意識”という形而上的生成因を導入して宇宙そのものの自律進化論という形で理解することを目論む、ポスト量子力学の主張と合致している。現在様々な物理学者達が、時間と空間の全てを包摂する全体性の宇宙を語る統一理論として、“原意識”(fundamental awareness)の存在を欠かすことのできない要因として捉えようとしているのである。孟子の“浩然の気”にも同調する“普くある意識”(panpsyche)の自律進化の過程として宇宙の生成発展を理解しようとする試みは、古代思想と科学思想の合一を図ることを可能にする一際意義深い企図のように思える。自然界の4つの力を統合する統一理論として考案されたものの、最終的な理論構築に行き詰まった感のある超弦理論に代替する最先端の統一理論は、“consciousness study”等の言葉で呼ばれる“awareness”の研究を通して試みられているのである。その構想の代表的な一つが、ジェイムズ・ベイクラー(James Beichler)により“The Emergence of Neurocosmology”(2016)等の一連の論文において主張されている“神経宇宙論”(Neurocosmology)であった。同様にジャック・サルファッティ(Jack Sarfatti)やフェデリコ・ファギン(Federico Faggin)等の物理学者達が、クオリアや直観等の哲学的問題を宇宙論の再構築を通して解明しようとしている姿勢は、奇しくもロマン主義思想が空間に伸張する“神経”という概念を用いて世界の本質を記述しようと試みた哲学的企図にも重なるものとなっている。老子やパルメニデス等の多くの古代思想家達が、現代のポスト量子力学の辿りついた知見と等質の宇宙論的発想を遠い昔から展開することができていた事実そのものが、直観(intuition)という概念を通して全体性の宇宙構造とそれを把握する意識の関連を物理学的な観点から再検証することを目指す、形而上的構想の拠り所となっているのである。

Dislocation of Genre Concepts in Madlax: Fictional Perspectives and Hyper Natural Directing Method 2
https://www.academia.edu/36134761/Dislocation_of_Genre_Concepts_in_Madlax_Fictional_Perspectives_and_Hyper_Natural_Directing_Method_2

この発想を延長すると以下のような考察に繋がります。
 ポスト量子力学(PQM)のパースペクティブにおいては、ジャック・サルファッティ(Jack Sarfatti)があらゆる事物におけるエンタングルメントの連繋を仮定することにより、未来から現在へと影響を及ぼす交差的な因果関係性の存在を主張する“retrocausality”という概念を導入して、宇宙創生に及ぼされた原意識の影響の新解釈の許に包括的な宇宙論の構築を試みている。“宿命”や“未来予知”等の超自然的な概念に科学的説明を与えることのできるこの発想は、仮構における擬似現象連関に現実世界の基幹原理を包含する超越的意味を与える、形而上的原理機構にも繋がるものがある。

 さらに来年3月に公刊予定のアニメThe Last Unicornの研究書においては、フィクション論の重要主題として意味の構築と事象を生成する意識の力のあり方に焦点が当てられることになります。
 ジャック・サルファッティはカバラやルネサンスの神秘思想と量子力学的知見を統括する視野を備えた形而上学的宇宙論として、未来の知的生命体によってもたらされる宇宙の生成因と目的因を語っているのである。ポスト量子力学的には、過去から因果関係の連鎖によって及ぼされる “history wave”に対照して“destiny wave”という言葉を当てはめて進化の要因を捉えることもできるこの形而上的発想は、視点を変換すれば東洋思想の“天命”をシステム理論的に解明する仮説ともなり得るものだ。
Ref.(Beyond Bohm-Vigier Quantum Mechanics, January1998, DOI: 10.1007/978-94-017-0990-3_48)
啓示や予知等の超自然現象を、自由意志の存在と因果律との関連をも加えて、宇宙の非局所性の構造に起因するエンタングルメントの効果として統合的に再把握することを図る彼の革新的な主張は、時間論の革命的転換の可能性を示唆する試論としても有効なものなのである。
 ジャック・サルファッティによれば、ユングの唱えるシンクロニシティの現象も、ジョン・ライリーが“宇宙的偶然性支配”という表現で語った、未来の進化した知性体によってもたらされる量子的連繋操作という文脈で理解されることになる。これはソクラテスのダイモニオン等の概念をも包摂することが可能な、意識の研究が新たに示唆する統合的宇宙論構築の展望に繋がる仮説であると思われる。
Cf. Part of my new physics message is that synchronicity can be an effect of contact with advanced intelligence able to manipulate the quantum connection in what John Lilly called “cosmic coincidence control”.
Jack Sarfatti;Literary and Scientific Essays by and about Jack Sarfatti
(https://www.academia.edu/37365216/Literary_and_Scientific_Essays_by_and_about_Jack_Sarfatti)

 このような論考のきっかけを与えてくれているのが、現在の日本のアニメやゲーム文化です。例えばエロゲー『Fate/stay night』の示すメタ構造性については、以下のような考察が行われています。
 
 物語が物語としての完結した意味を構築せねばならないという制約を負っていることを、物語あるいは物語の中の登場人物自身が明確に意識しているという構造は、20世紀ファンタシー文学におけるメタフィクションの戦略の一つの典型になっていた。これに対して21世紀におけるゲーム的仮構世界は、その特有のメタフィクションの戦略として、時に物語の意味性を基底から破綻させるメタ物語的構図を導入することとなるのである。ゲーム的仮構の、物語的仮構と一線を画すパースペクティブの許に展開する特質は、ファンタシー文学の裡にあった哲学的位相をさらに深めたものとなっている。類型的な“物語性”を破却してそこに主張されるのは、記述システムとしての仮構が保持する純然たる思弁性である。純思弁的伝奇活劇ビジュアルノベルである『Fate/stay night』は、概念存在たる英霊と概念人格たるサーヴァントに加えて、さらに“概念魔法”という興味深い概念を提示することによって、仮構世界の観念空間の全面的拡張を図ることとなる。彼等の前に現れたバーサーカーの、いかなる攻撃をも無化する程の圧倒的なサーヴァントとしての防御能力を推し量って、聖杯戦争の戦士セイバーは士郎に語るのである。

 「……これは憶測ですが、バーサーカーの宝具は“鎧”です。それも単純な鎧
 ではなく、概念武装と呼ばれる魔術理論に近い。おそらく――バーサーカー
 には、一定の水準に達していない攻撃を全て無効化する能力がある。私の剣、
 凛の魔術が通じなかったのはその為でしょう。」

 セイバーの語る“概念武装”は、ゲーム世界を枠外から瞥見する視点に従えばゲーム内仮構を進行するための各種設定条件の一つとしてプログラムされた、規定の相関関係と設定値に還元される情報概念に他ならない。ゲーム的仮構の中に導入された魔法の機構と超自然的存在の示す特殊能力について、このビジュアルノベルは際立って自省的な視点を有しているのである。概念情報の集積として物語化されたゲーム作品は、一つの独立した可能世界であると同様に、“現実世界”という可能世界の中で体験される一個のヴァーチャル世界でもある。ゲームをプレイするプレイヤー/鑑賞者は、概念を抽出して一つの可能世界の世界観を構築する意識の主体として、単独の世界のパースペクティブのみに拘束されない次元跳躍的な複眼的視点を、このようなゲーム的メタフィクションの機構を通じて提供されているのである。

「召喚魔法と個人存在―『Fate/stay night』における存在・現象・人格概念」
https://www.academia.edu/7884950/Identity_of_Summoned_Heroes_Aspects_of_Psyche_and_Phases_of_Persona_in_Fate_stay_night


総合戦闘技術評価演習
 軍学関係の専門用語がいくつもでてきました。これらは作品世界のリアリティを構築する上で重要な役割を果たすと共に、プレイヤーにとってただの雑学以上の実際的な専門知識を学ぶ機会を与えてくれてもいます。様々な点で教育以上に教導的な要素を備えているのがこのエロゲーです。

遅延発火装置
 読んで字のごとくですが、ゲーム『Muvluv Alternative』の専門用語辞典の一項目を形成する言葉となります。

NOE
 字幕ではこの表記でしたが、音声では「匍匐飛行」と語られていました。ちなみにWikiによれば、以下のような説明がなされています。”NOE”が何の略かも、説明がありますね。

【地形追随飛行】(ちけいついずいひこう)
Contour-Flight,Nap-of-the-Earth(NOE).
「匍匐飛行」とも。

レーダーによる被発見率を下げるため、山や谷あい、地表数十メートルを飛行すること。
巡航飛行と対比して、障害物が多く空気密度の濃い低空を飛行するため、レーダーや目視での発見を遅らせることが出来るが、燃費が悪く、機体や操縦士に余分な負担をかける欠点がある。
よって、危険空域近くで行われることが多い。

現在の戦闘機や特殊作戦機は、FLIRやLANTIRN・地形追随レーダーの装備により、昼夜問わずにオートパイロットで飛行することができる。

アメリカ陸軍では、ほぼ一定の対気速度で、障害物や地面に沿うように高度を変化させる場合を「Contour-Flight」、速度も高度も変化させる飛行を「Nap-of-the Earth(NOE)-Flight」と呼んでいる。
もちろん、NOE飛行が最も低高度かつ燃費が悪い。

アンチマテリアルライフルは「対物ライフル」、「対人ライフル」と区別される銃器です。似ていますが、「アンチマター」(antimatter)の「反物質」とは別物でした。

プローン
 prone ですね。腹ばいになっての射撃。姿勢が安定しているのでもっとも精度が高い。辞書に入れておきましょう。


リアクションペーパーで質問を頂いたのでお答えします。
 オルタネイティブ(alternative)は、 「選択肢」の意味です。様々ある多世界のうちの一つのあり得る可能性が語られた「アンリミテッド編」に対して、それとは別の選択肢が語られているので「別の可能性」という意味です。
 Fate シリーズに登場する「オルタ」も同様の意味ですが、正規の人格に対して「裏人格」に相当する変化形として「オルタ」が用いられています。ルートを変えてプレイしてみると、セイバーさんが全く別の可能性を表現して危険な黒セイバーを見事に演じているのがわかると思います。


戦術機
 『ガンダム』なら「モビルスーツ」、『ファイブスター物語』なら「モーターヘッド」、『フルメタルパニック』なら「アームスレイブ」と呼び方は異なりますが、『マブラヴ』では「戦術機」です。ここで元の世界でやっていたゲーム「ゲームガイ」の知識と前のターンでの経験が役立ってきます。何故か霞がゲームガイを武の元に持って来てくれます。ここに生じた謎が伏線として機能し、重要な知識の解明に繋がることになります。さらにコンピュータ制御の戦闘マシンとゲームでの操作設定に関する蘊蓄が、独特の作品世界内のリアリティを構築することになります。詳細設定の緻密な描写が、説得力のある仮構世界記述を可能にしています。しかしどれだけ評価されて褒められても素直に喜べない理由が白銀武にはある訳です。

月詠中尉達の不可解な武に対する敵意。「お前は死んでいる」
夕呼博士の検索結果。この世界の武の運命。だとしたらこの世界の純夏は?

戦術機の機動
 武はゲームガイの操作方法からの類推でコンボやキャンセル等の導入による操縦方法改革を提案する。しかし夕呼博士は現実世界における機動の実際とゲームにおける単純化された条件処理の違いを指摘して武の考えの甘さを指摘する。しかしなおかつ夕呼博士は武のアイデアを実行に移す判断を行う。このあたりの描写が説得力を持っています。
 『ファイブスター物語』の場合は、モーターヘッドを操縦する「騎士」に対してあたかも「小脳」の機能を担当して機体の間接的操作を行う「ファティマ」が導入されていました。行動における、意識を担当する大脳と無意識的に機械的動作を行う小脳の役割分担に対する理解は、どちらの場合でも的確に捉えられています。

人間思考とAI思考
 ゲームガイのプレイ方法から着想した武の戦術機の機動制御案は、コンピュータと人間の思考方法の相違とゲーム世界と現実世界の環境条件の違いのために、そのまま実用化することができないものであった。にも関わらず夕呼先生は、武のアイデアを戦術機機動プログラムに組み込む改良案を受け入れる。並列処理を行う人間思考に代替する機能を直列処理を行うAIに行わせるための技術が、それを可能にするからである。人間思考の意味判断や刺激に対する認知は、実は独特の情報変換操作の手を借りてなされている。ほとんど無意識に行われているこの処理については、以下のリンクをご覧ください。

知覚情報の延長(extension)と内包(connotation)
https://www.academia.edu/36797813/Meaning_Experience_and_Monism.docx

夢の中の純夏
 夢だとばかり思っていたが、実は伏線です。並行世界を扱う仮構的設定の基軸となる発想がこれに関連することになります。

HSST落下
予想外の順番で予期していたイヴェントが発生する。未来を変えようと様々に努力をするが、そのためには予想している通りの未来が訪れてくれなければ困る。過去に戻ってやり直しを図る行為は根本的に矛盾を含んでいる。
HSSTを横浜基地に落下させて被害をもたらすことの目的。大人の世界の政治的判断が様々に推測される。ベータを相手に人類が力を合わせて戦っている訳ではなかった。オルタネイティブ5推進派の理由と目的には一理を認めることはできる。前のターンでは知らなかった様々な深い事情が明らかになって来る。未来を知っている武だが、現在の全てを知っている訳ではない。

横浜基地の真下にあるベータのハイブ
これが不可解な陰謀と恐ろしいトラウマをもたらす原因となります。オープニングにあった地下空洞でカプセルに納められた人間の脳を見つけ出すシーンは、この横浜基地の地下であった。オープニングシーンのヴィデオクリップを1回目にアップしておきました。

もとの世界の純夏や夕呼先生 
 もとの世界にあったゲーム機「ゲームガイ」の知識から発想を得た戦術機機動プログラムの改良案は、意外な成功を収めることになった。そればかりでなく、もとの世界の夕呼先生はこちらの世界の夕呼先生が手こずっているオルタネイティブ4の構想を、既に完成していたらしい。基本的には同じではありながら、様々な詳細項目において異なりを持つ並行世界における、人格や器物の「同一性」について、新たな定義を設けて理解し直す必要がありそうである。あらゆる並行世界において共通する「貫世界的」同一性と、偏差によって区別された「個別的」同一性の二つに分けて、「同一性」(identity)という概念を考え直さねばならなくなってくるからである。

様相論理学と多世界解釈
 「もし〜であるならば」という仮定を、「〜が〜である世界Aにおいては〜」という記述形式に変換して、仮定の構文を多世界を対象にした記述に置き換えて考えるのが、「様相論理学」(modal logic)である。量子力学から得られた素粒子の存在の重ね合わせ現象に対する解釈とは別個に、言語記述のシステムとして構築された仮想的多世界解釈が存在する。微小な偏差を含む無限の数の世界が、存在物の一つ一つの個別的な様相(mode)を語るために想定されることになる。抽象的な論理思考は、概念空間上に無数の並行世界を創り上げる行為となる。

たまのお父さんは国連の偉い人だった。次にあらわれた怪しいおじさんは何者か?

可能世界
 理論的に考えられるあらゆる世界を「可能世界」と呼びます。アニメやゲームや小説や映画やマンガや、ヤマも意味もオチもない同人誌も、形式的には無数にある可能世界の一つです。世界を構築する諸要素の、ある項目の省略あるいは付加あるいは置き換えの操作によって、同列の擬似存在としてこれら全てを理解することができます。従って並行世界間移動の特殊例を描いたゲーム作品「マブラヴオルタネイティブ」もまた、そのような可能世界の一つということになります。
「可能人格」として初音ミクの様々なヴァリエーションと、それらのマトリクスによる一覧表記述について考察した「こんにちの文化」の主題の延長課題として、「フィクションとしての可能世界」における現象的発現例と原型存在との関連に対しての理解を図る考察課題が得られます。


マブラヴ界そのものが無数の偏差と並行記述を含む
 製品としてのゲーム作品の各々がそのまま一つのあるいはいくつかの並行世界として認められます。この現象の実態をまとめてくれているのが、以下のリンクです。
マブラヴシリーズ解説のページ
http://eche.hatenadiary.com/entry/2015/12/12/203000

マブラヴ界出来事時系列表
https://www9.atwiki.jp/alternative/pages/18.html


怪しいおじさんは白銀武のことを知っている。

帝国情報省の人物だった。

名前は鎧衣。美琴のおとうさんだった。

やってきた用件はXG-70について。

「戦略研究会」が事を起こすと?
前のターンにあったクーデターと関係する?

本題は帝国軍と国連軍の双方に発令された、正規のルートではない最優先命令
 一度目は11月10日、帝国陸軍総司令部宛、ベータ上陸の日
 二度目は11月28日、国連の宇宙総軍北米司令部宛、国連軍のHSSTを監視
 夕呼先生の関与を探っている


武の夢について、夕呼博士の説明
 脳波ってのは、膨大な数の神経細胞に発生する非常に微弱な電位変動のことなのよ。
だから通常は、分散性が高すぎて観測することは難しいんだけど、
安静閉眼時にはその同期性が高まって観測することが可能になるわけ

つまり今回の現象はーー通常は、その同期性が高まって、脳波が観測しやすくなるはずの睡眠時に、
なんらかの原因でニューロンネットワークが活性化し脳波の分散性が高まってーー
その結果、あんたの脳波を捉えられなくなったと言うわけ。
その原因と言うのがーー

脳の活動が高まってーーオレの精神が、「元の世界」に戻っていたーーから?

その可能性は高いわね。
あんたの「リアルな夢」が「元の世界」の現実で、
眠っている間、あんたの精神が「この世界」から「向こうの世界」
にシフトしていたんだとすれば、睡眠時なのに脳波が全く
観測できない状態を説明できるわ

武が眠っている間、霞は起きて何をしていた?



箱の中のリンゴ
 夕呼先生は「箱の中のリンゴ」で説明してましたが、話の内容は「シュレーディンガーの猫」でした。一つの世界で事象として生起する前の可能性の束である原存在は、相矛盾する状態同士を重ね持つ「確率」の霧の状態にありますが、意識を向ける観察者の行う「観測行為」のおかげで、確率の霧状態からある特定の「事象」としての収束がもたらされることになります。
 ここで「霧」と語られたものを、言葉を換えて「波動」として理解すれば、正反対の波長同士が互いを打ち消し合って相殺状態にある「デコヒーレント」な状態から、これまでの均衡状態の崩壊がもたらされた結果世界の中の一現象として実体化する「コヒーレント」な事象の具現化が得られる、と理解しても同じ結果となります。夕呼先生の平行世界理論によれば、貫平行世界的に存在を移動することができる意識は、脳波の「同期性」と「分散性」によりその遷移を実現させている訳です。


世界が欲する
 夕呼先生の仮定した平行世界理論によれば、白銀存在は複数の平行世界間を移動することができたものの、構成要素の一つを失って本来の安定状態を喪失した世界と、余分の構成要素を重複して抱え込んでこれまた安定状態を失った世界は、お互いに初期の安定状態への回帰を果たす要素交換の再試行を行うことを欲するのであるとされていました。
 これは丁度熱力学的にみれば、エネルギー密度に濃淡の差がある空間のそれぞれが均衡状態への回帰に対する指向性を持ち、時間の経過と共に世界全体が最終的均衡状態へと同時進行する結果、結果的にはこれ以上の熱的変化の要因を持たない安定状態すなわち「熱死」に導かれるとされる「エントロピー増大則」が、世界内部の諸局所領域に関してではなく「間世界的」に適用されたことになります。


多世界理論と観測効果と観測の主体たる意識存在
 デカルトはキリスト教会の干渉を防ぐために自分の研究対象を客観的な物質存在に限定し、宗教の扱うべき領域である霊的事象については一切触れることを避けると言明することによって、「科学」という自己の研究領域を守ったのでした。しかし量子的事象の究明が進むと共に、物理的事象の生成における観測効果の影響が無視することのできないものであることが分かってきました。ここにおいて「科学」は、「意識」と意識の主体である「精神」の存在を除外することができなくなってしまった訳です。
 『マブラヴ・オルタネイティブ』においては、無限に分岐した平行宇宙を通貫して存在可能な精神的主体である「自己」性が、物質――精神連続存在を宇宙規模で理解するための仮説として採用されていると考えることができそうです。「変性意識状態」(altered states consciousness)と呼ばれる超能力(パラサイコロジー)的事象を裏付ける未知の意識の領域は、本人の自覚しない異世界的「もう一人の私」の別種の知覚や思考の残留感覚を示しているものであるかもしれません。「夢」という未だ解明のなされていない「現象?/意識?」の謎を解く鍵が、この辺りに潜んでいるかもしれないと妄想してみたくなるところです。



夕呼先生の秘密研究

 00ユニット、オルタネイティブ4の成功はこれにかかっている

 その正体は?

 霞はどのように関係する?あるいは純夏は?


特別任務と霞のサービスカット
 「あーん」
 明らかに前回のターンにはなかった状況が展開する
 意識の世界観移動と元の世界での実体化
 オルタネイティブ4の完成を導く鍵ー00ユニット
 全てが武の働きにかかってくるー「こちらの世界を救える」
 あちらの世界にはこれまで諦めていた平和と純夏がある
 あたし年下は性別認識圏外よ
 「因果律量子論に基づく多元宇宙の実証考察」
 複数の世界に同時に干渉したら何が起きるかわからない

天元山噴火と不法滞在者強制排除
 前回のターンでの冥夜の命令違反と戦術機の損失
 日程のロスをいかに回避する?
 帝国の都合と国連軍の都合と人類全体の都合


霞の正体と夕呼博士の活動の実態が明らかになってくる
 オルタネイティブ1から3までの計画内容
 ベータ対人間 人間は生き残り戦略のため何をしてきたか
 全体を救うための武の判断、夕呼博士の判断


パラレル類型 ヒラサワのインタラクティブライブ
 受講生の書き込みをいただきました。

 私は推しジャンル上、パラレルワールド考察をする機会が多いので(ヒラサワというミュージシャンの作品群ですが)、マブラヴ・オルタネイティブも推しジャンルのパラレルワールド設定と比較しながら見ています。

 今のところ両者のパラレルワールド設定はほとんど同じですが、微妙に違う部分もあります。
 例えば、マブラヴでは武が世界線を移動したことにより元居た世界線のバランスが崩れたという設定がありますが、私の推しジャンルでは各世界線から同一人物が1つの世界線に何人も集まって問題を解決することがよくあります。この場合、世界にそれほど不都合は起こらないようです(世界線を移動した主体がその行為によりまた別の世界線を生成しているのでパラドックスは起きない、という設定なのかな?)。また、世界線を移動する人物を世界が引き留めようとしたり、世界線移動に膨大なエネルギーを費やすこともありません(意思だけでぽーんと移動します)。
なのでマブラヴの設定は私にとって新鮮に思えました。数の決まった世界線があって、それなりに質量保存の法則?のようなものがはたらいているのだなぁと。

 同じパラレルワールドをテーマとしていても、その様相は作品によって様々なんだなぁと思いました。
 何か特徴のあるパラレルものをご存知の方は布教してください。

コメント
 『マブラヴ』の設定では、他世界間に働く禁則項目のような原理が想定されている訳です。パラドックスや不都合が生起するかしないかも、異種のパラレルワールドを構築する個別の条件になるかもしれません。夕呼先生は武を原子の中の電子に例えて、物理現象を支配する法則性に準ずる「間他世界的原理」を予測していました。
 これと発想的に関連する理論としては「パウリの排他律」があります。これによると複数のフェルミ粒子は、同一の量子状態を占めることはできません。しかしボース粒子においてはこの原理は適用されていません。並行世界の各々が異なる物理法則に従う異世界であることは予測されますが、並行世界間を支配する法則性があると仮定すれば、これはいかなる「原理性」と考えるべきなのかが考察の課題となります。「フィクション」という一つの可能世界の中で既に語られている事実をいかに解釈すべきか、という問題も提示されます。人間存在あるいは意識が「間世界的」にいかに同一性を保ち得るのか、そこに果たして「貫世界的」な法則性はあるのか、が思弁の対象となる問題です。

夕呼先生の助言
「おそらく、、、認めたくないと強く思うことで、逆に向こうの世界を強く意識してしまったのじゃないかしら」
「わかった? だから今度はその逆をやるわけ」
「こっちの世界を知れば、またシフトするんじゃないかって危機感が生まれる」
「その危機感は、無意識下であんたに向こうの世界を強く意識させ、向こうに引き戻す力を生むはずよ」


霞の正体と霞の役割

 あっちの世界の武を繋ぎ止める観測者
 エンタングルメントの関係との類比
 ESPの発現体の能力ーリーディングとプロジェクション
 霞とあやとり

世界と意識(記憶)の関係性
 元の世界とこっちの世界を結ぶ因果関係
 「情報」として存在と意識の双方が同列に世界を構築する要素として考えられている

パラドクスの有無ー因果関係と運命性
 「それを白銀が覚えていたというのなら、『元の世界』にあんたが行くこと自体が、既に『元の世界』の確率分布に含まれている、確定した事象だったって事だからね」

世界の保持する情報
 「それによって『元の世界』そのものに記録されているあんたの情報が、差し込まれた別の確率世界、つまり『この世界』の断片に収束し、実態化した、、、という所かしら」

多世界間関係原理 「世界5分前創成説」の発想と比較してみて下さい
 「白銀の複数化と、失った記憶が蘇った現象は、原理が同じなんじゃないかしら」
 「今のあんたは『元の世界』の記憶も、『前のこの世界』の記憶も完全じゃない、、、ということは、世界間をシフトする際、何らかの理由で記憶情報が欠落してしまうという事、、、」
 「欠落した記憶情報は、シフト前の世界に残るのか、虚数空間に飛散してしまうのか、、、いずれにせよ、それが蘇ったのは事実、、、」

涼宮ハルヒが無意識のうちに創成した「閉鎖空間」は、過去の歴史(世界の記憶)と共にいきなりハルヒによって創られた可能世界であった。

関連概念
 ベルグソンの時間論
  現象と記憶、エランヴィタール

 アルフレッド=ノース=ホワイトヘッドの現象的本体論
 19世紀末から20世紀初めにかけては、アインシュタインの相対性理論の発表とミンコフスキーの4次元時空の定式化に先立って、デカルト・ベーコン的事象理解の限界点の超出を意識した様々な実在論や本体論が提示されようとしていたのであった。ジェイムズ・クラーク・マクスウェルは、ニュートンが仮定した真空の3次元空間というモデルとは異なる場の概念を導入して、電磁気現象を解明する新規の物理理論を構築しようと企てていた。エルンスト・マッハは、局所的な作用の連鎖という事象の標準モデルに基づいて存在と現象のあり方を記述するニュートンの力学的描像を俯瞰するする視点から、全体性の世界との関連として熱的・電磁的・磁気的・化学的過程として物理現象を把握しようと試みていた。このようなマッハの思想と研究は、アインシュタインに多大な影響を及ぼしたことが分かっている。[i]さらにウィリアム・ジェイムズは、従来の局所的作用の機械的連鎖を行う力学的単位としての“物質”という概念に拘束されることのない観点から、心理的経験そのものを事象の本質として捉えることにより、ある種の“心霊的”原形質存在を仮定して事象発現に対する主観意識の関与を重視した現象把握を達成しようと目論んでいた。またアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドは、力学的作用を行う基礎単位である物質粒子に代替して、生起するできごとそのものを世界の基本的実在として考えようとする、現象学的本体論の構築を模索したのである。これらの科学者と哲学者達の関心に通底すると思われる心理学的な宇宙解式が、Peter and Wendyの様々の場面と記述に投影されていることを指摘することができたのである。[ii]

[i] アインシュタインの相対性理論に及ぼした先行する科学者/哲学者達の影響とファンタシーに代表される仮構記述の思弁的問題性については、筆者の『アンチファンタシーというファンタシー2 最後のユニコーン論』(牧歌舎、2009年)に所収の「量子論理とパラドクスと不可能世界─アクチュアリズムとアンチファンタシー」を参照されたい。
[ii] Peter and Wendyに関する量子論理的世界解式と心霊的存在記述についての考察は、筆者の『アンチファンタシーというファンタシー』(近代文藝社、2005年)において様々の角度から行われている。

Identity and Individuality of Alternative Fictions
https://www.academia.edu/7786902/Identity_and_Individuality_of_Alternative_Fictions

不法帰還者救出の報道と冥夜の反応
 組織の判断と行動者の使命

綾峰の不審行動
 綾峰の背負う背後関係と真の人間性が分かってくる


次週の課題
 クーデターのエピソードの背景情報を理解するために、神奈川県の地理、特に小田原から芦ノ湖及び伊豆半島辺りの地勢を把握しておいてください。

国連軍と帝国軍と将軍家と政府
 アメリカの政治的思惑と国内の事情が複雑に絡み合っている
 榊と綾峰の背後関係が明らかになってくる
 鎧衣と壬姫の父親たちとの関わり
 207小隊の人員構成はいかにしてなされたのか
 夕呼先生の政治的立ち位置は?

綾峰が落とした手紙
 差出人は津島萩治
 様々な疑惑 政治的陰謀と人格的演技
 特別レシピ「焼きそばパン」の効果

クーデター勃発
 帝国軍内部における造反
 珠瀬事務次官の要求
 米国太平洋艦隊の動向
 国連軍横浜基地司令ラダビノッドの判断
 「この横浜はオルタネイティブ計画直轄基地です」
 G弾を使用した米国の思惑
 「次期オルタネイティブ予備計画が動き始めて早3年、、、次期計画推進派の圧力も日々高まっています」
 「対BETA戦略の見直しを提唱する米国は最早しびれを切らし、オルタネイティブ計画自体に見切りをつけ、独自行動に踏み出す機会を窺っています」
 鎧衣課長はどの勢力を支持している?
 「現在、帝都守備隊を中核としたクーデター部隊は、首相官邸、帝国議事堂、各省庁の政府主要機関を完全制圧。各政党本部と、主要新聞社や放送局も占拠し、帝都機能の殆どを掌握していると言えますな」
 クーデターの主導者は沙霧大尉
 帝国近衛隊の月詠中尉の任務は?
 訓練部隊207小隊に課せられた任務
 「後方警備任務ー塔ヶ島城の警備、作戦区域は芦ノ湖東岸一帯」


珠瀬事務次官とラダビノッド基地司令と夕呼博士
大人の会話は冷静で奥が深い
それぞれが見解を違えるが、相手の立場も理解できている
夕呼先生は事態をどのように理解し、何をしようとしている

オルタネイティブ4推進派とオルタネイティブ5推進派の見解の違いと具体的な行動目標

訓練兵の207小隊の特別任務

横須賀沖に展開していた米軍を編入した国連軍

近衛兵の月詠中尉は将軍ではなく冥夜を警護する

鎧衣課長の情報
帝国軍は横浜基地を包囲
首都はクーデター部隊が掌握
仙台に臨時政府誕生
何故か207小隊は神奈川の警備を命じられる

大人の立場と行動がしっかり描けているアニメ、マンガは主題構築姿勢が評価できる。
しかし現実世界の大人たちは、主題設定の薄っぺらなフィクションそのままに、嘘とごまかしだらけ。



斯衛軍と国防軍と米軍と国連軍
オルタネイティブ5推進派の選択した政治的手段

クーデター軍は皇居を包囲中
国防軍が国連軍の横浜基地を包囲しているのは何故?

多国間の思惑が絡んだクーデター事件の背後関係が、207小隊のメンバーに集約して反映されている

仙台臨時政府の判断と米国軍
第七艦隊は相模湾沖から東京湾へ侵入
横浜基地の国連軍の対応は国防軍支援
207小隊の任務は後方警備
 任務内容は塔ヶ島城の警備、作戦区域は芦ノ湖東岸一帯とする
 横浜基地駐留の帝国斯衛軍第19独立警備小隊も随伴

クーデター決起は結果的に何をもたらしたのか


講義最終回
離城警護と殿下の保護任務
 クーデター軍の追撃と護衛避難
 ウォーケン少佐の米軍部隊
 月詠中尉と神宮寺軍曹とウォーケン少佐の判断と行動
 沙霧大尉の判断と信念
 理解不能の休戦宣言の意図は?

白銀武の判断と迷い
 覚悟と信念
 自分には拠り所がない?
 これが12月10日以降のストーリー展開を予兆する伏線になっています。

米軍内部の事情が肌理細かく描かれる
 フィンランド兵

休戦を妨害した米軍内部からの発砲
 帝都における帝都軍内部からの発砲との関連
 月詠中尉と神宮寺軍曹はこれらの内部情勢を知った上で発言していた。



 講義では、マブラヴ世界2月6日のクーデター事件までしかプレイを進めることができませんでした。

 2月10日の訓練中のBETA出現を境に、ゲーム『マブラヴオルタネイティブ』は鬱ゲーとしての本領を発揮して、その本質を露わにすることになります。そのあたりは是非プレイ動画を自分で再生して確認してください。鑑賞と考察のヒントを以下にまとめておきます。

挫折とやり直し
 12月10日の、戦術機のOS機能比較演習の際の突然のBETA来襲が語られるエピソードでは、以前に経験して覚えた情報が全く役に立たない新規の事態が生成して、これまでの有能な救世主白銀の人物像を演じることが不可能になった主人公の、壊滅的な挫折の有様が語られることになります。「鬱ゲー」と呼ばれる『マブラヴ』の真髄は、この辺りから開帳されることになる訳です。大変重く、辛いエピソードが長々と続くことになりますが、これこそ『マブラヴ』の真骨頂と言える部分なのです。世界の根本にある問題性の重さに耐えかねて現実の瑣末事に逃げるのは、年取って精神対応力の虚弱化した大人のよくやることですが、現実からも根本原理からも逃げないのがこのエロゲーです。

元の世界に逃げ帰って、また追われるように
 12月10日(元の世界では12月13日から12月17日まで)は、主人公白銀武のずたずたぼろぼろのエピソードが語られることになります。
 もとの世界でもこちらに劣らない悲惨な体験を余儀なくされ、「世界を救う傍観者」としての立場から「世界に害悪をもたらした張本人」への残酷な移行を経験することになります。主観の中に描かれた幻想世界から覚醒した後の苛酷な現実世界の実相として、実は同等の精神的体験は我々の誰のもとにも訪れる可能性のあるものです。
 全てを失って精神的に生まれ変わり、またこちらの世界に戻って仕切り直し、一人の「弱虫」として一からやり直しです。
 再びこちらの世界に戻って、00ユニットの完成を知らされると共にいよいよ鑑純夏の消息が判明します。こちらの世界の日付は12月17日、これに続く12月18日辺りが「哲学的主題」の始まりです。これらの重たいエピソードはこのゲームの真髄とも言える部分なので、各自13回アセンブリールームのゲーム用コンピュータでプレイして確認しておくといいでしょう。

「エロゲー」としての新機軸
 新規の攻略対象と攻略ステージの考案――エロのための哲学と形而上学
 12月19日のエピソードでは、BETAに関する生態学的解釈を企てた際の、常識では到底理解不能の未知の要素が、むしろ際立ってリアリスティックに語られています。12月20日のエピソードにおいては、新種の敵であるBETAを相手にすべき戦術的考証として対応を迫られることになった戦術機の設計思想の変化が、極めて論理的にきめ細かく語られていました。共に画面の動きがない、映像として表現するには非常に困難な抽象的内容が密につまったエピソードでしたが、基本設定がしっかりしているのでむしろ見応えがあります。ゲームだからといって全てを絵で表現しなくとも、文字データによる概念的記述のみで十分に鑑賞に足ることが証明された2回のエピソードでしたが、その裏で白銀と00ユニットの機縁の深まりも同時進行で語られていきます。00ユニットは、結局純夏の人格を投射した「最終兵器彼女」だったのでした。
 12月21日のエピソードは、ハイブ突入を目指した演習におけるフォーメーションの意義性の戦術的把握が、今度は新しく加わった分隊の同士達との会話を通して語られていました。これらの裏設定のおさらいの後12月22日のエピソードに至り、ようやくこのゲームのストーリーの結末を予期させる今後の展開への道筋と、これまで隠されていた事実のさらなる開示が得られることになります。それはやはり完成した00ユニット純夏の存在性向の担う“自己同一性再検証”に関する概念理解の手法の再提示という形で展開していくことになる訳です。“エロゲー『マブラヴ』”として他に例を見ない特異な攻略対象と最終攻略ステージを構築するために、間多世界的情報伝播の超宇宙論的仮説に基づいた、“貫多世界的人格同一性”という概念の経験則的理解の枠を超えた大胆な提示がなされることになる訳です。考えてみれば滅茶苦茶重たい“エロゲー”ではありました。

“最終兵器彼女純夏”
 12月23日にはいよいよ、12月25日に佐渡島ハイブ総攻撃が行われる計画があることが部隊に告知されます。しかし12月24日まで、相変わらずのまったりとしたペースで、冥夜や他の仲間達との交流を通して『マブラヴ』の反省心に満ちた緻密な世界観の掘り下げがなされていきます。遂に00ユニット純夏が人類の切り札である最終兵器の中央演算処理ユニットとして機能するものであることが明かされ、いまだに動作が不安定な純夏に対する白銀の“調律”の重要性が夕呼博士によって説明されます。
 12月25日は人類の命運を賭けた佐渡島総攻撃が行われますが、純夏を搭載した新兵器は圧倒的な攻撃力を発揮した直後に、原因不明の不調を起こして擱座してしまいます。新たな希望の幕開けを感じさせると同時に、くやしいばかりのあっけない結末を迎えたのが、12月25日の佐渡島総攻撃でした。
 12月26日には夕呼博士との話し合いの結果純夏の突然の不調の原因が明らかにされ、改めて白銀は世界を背負う自分の運命の重さを眼前に突きつけられてしまうことになります。“因果導体”として多世界間の情報(記憶)の混淆をもたらしてしまう特殊存在である白銀に全ての原因があったのですが、この事実に対する夕呼博士の合理的に割り切った科学者的判断には驚嘆すべきものがあります。このような苛酷な経験を通して「大人になる」と同時に、白銀独自の「大人になって割り切る」ことのできない純粋な精神のみが00ユニット純夏の「調律」に役立つことを教えられることになります。

お約束のエッチ・シーン
 「エロゲー界の哲学」としての『マブラヴ・オルタネイティブ』に対する考察の、この講義のヤマとなるお約束のエッチシーンは、12月28日のエピソード開始後2時間20分辺りから20分程の時間で展開されています。“ダッチワイフとのエッチ”という特殊状況を効果的に演出するために、“平行宇宙”間を遷移する“因果導体”と世界と個人の保持する“記憶情報”の伝播という擬似科学的仮説、さらに“貫多世界的同一性”という形而上的思弁を展開したのが、この理屈っぽいエロゲーだったのでした。

エロゲーとしての落とし前
エッチ・シーンの背景―貫多世界的形而上SFドラマでもある壮大極まりないエロゲー
 12月27日には、精神状態の安定した00ユニット純夏が衛士の一員として小隊に配属されてきます。純夏と小隊の他の仲間達との出会いをきっかけに、白銀自身の現在の記憶が複数の平行世界の白銀の体験記憶の重ね合わせ(具体的には他の女の子たちとのエッチ経験の記憶)となっていることが分かります。このことが純夏の調律に微妙な影響をもたらすことにもなる訳です。そこの問題点を解消するためにも、白銀と純夏が性交渉を持って人間存在としての縁を深めることの必要性が生起してきます。
 12月28日にはエロゲーとしてのクライマックスとして、ようやく白銀と純夏のエッチ・シーンが描かれることになります。しかし二人が結ばれたこの日の夜が明ける間もなく、横浜基地は思いがけないBETAの奇襲に見舞われ、人類はさらなる深刻な状況を迎えることになるのです。



2018ゲーム芸術論 レポート課題

 以下に示された主題を自由に取捨選択して自らのテーマを設定し、ゲーム作品『マブラヴオルタネイティブ』について語りなさい。論考・考察に限らずこのゲーム作品を題材として語ることにより、二次創作として独自の何かを表現することも有りとします。Manaba course にアップされた解説と参考資料の内容理解に努め、自分なりの解釈を語ったり、疑問を提示しても構いません。
 他のゲーム作品との比較や別の主題との対比等を行う場合は、それらの内容について具体的な総括を行うことを忘れないようし注意してください。内容を反映する題名を施すことに留意します。送信するレポートのファイル名は学籍番号プラス苗字、例:「020053黒田」としてください。


 ゲーム作品『マブラヴオルタネイティブ』の仮構的特質はどのようなものであったか。“キャラクター攻略”、“ストーリー分岐”、“マルチエンディング”等の既存のゲームの常套的形式がいかにアレンジされていたか。作中の背景設定としてある“ループ構造”と、プレイヤーの操作によって確定するゲーム世界の仮構世界的枠組みが、いかにゲーム作品『マブラヴオルタネイティブ』の主題構築に関与していたかについて考察しなさい。

 『マブラヴオルタネイティブ』に導入された多世界的宇宙論の主題と、経験し成長することの意味性は、いかに作品の背景設定となる思想的要因とストーリー収束に関与していたか。

 『マブラヴオルタネイティブ』においては科学と思想と倫理がどのような関連を持って捉えられていたか。

『マブラヴオルタネイティブ』はどのような主題性を秘めた“エロゲー”であったか?宇宙論や日本現代史の知識がいかに“行動”や“判断”や“評価”の本質理解に関わっていたかを踏まえて、これらが“萌え”要素形成と新規の“エロ”要素開拓に対して及ぼした影響について語りなさい。

 ゲーム作品『マブラヴオルタネイティブ』を経験することにより得られた啓発的な発想、創造的なアイデア等があればそれらについて語りなさい。あるいはこのゲーム作品の本質を語るために有効な記述行為として、図表もしくは概念図等のデータ構築あるいは妄想的データ改変を含む主観的記述等を通して、二次創作としての主題反映を図りなさい。
13:53:33 | antifantasy2 | | TrackBacks
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