Archive for 01 January 2006

01 January

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 46


Chapter 3
COME AWAY, COME AWAY!

 For a moment after Mr. and Mrs. Darling left the house the night-lights by the beds of the three children continued to burn clearly. They were awfully nice little night-lights, and one cannot help wishing that they could have kept awake to see Peter; but Wendy's light blinked and gave such a yawn that the other two yawned also, and before they could close their mouths all the three went out.
 There was another light in the room now, a thousand times brighter than the night-lights, and in the time we have taken to say this, it had been in all the drawers in the nursery, looking for Peter's shadow, rummaged the wardrobe and turned every pocket inside out. It was not really a light; it made this light by flashing about so quickly, but when it came to rest for a second you saw it was a fairy, no longer than your hand, but still growing. It was a girl called Tinker Bell exquisitely gowned in a skeleton leaf, cut low and square, through which her figure could be seen to the best advantage. She was slightly inclined to EMBONPOINT.

 ダーリング夫妻が家を出た後しばらくの間、3人の子供達のベッドの脇の蝋燭はしっかりと燃え続けていました。みんなとっても良い蝋燭達だったので、彼等が目を醒ましていて、ピーターの姿を見ることができたら良かったのに、と思わずにいられません。けれどもウェンディの蝋燭はまばたきを始め、大きなあくびをしてしまったものですから、他の二つも同じようにあくびをしました。そしてその口を閉じる前に、3本とも消えてしまったのです。
 今は部屋の中には、もう一つの明かりがありました。蝋燭よりも千倍も明るい光でした。そしてこんなことを言っている間に、それは子供部屋の箪笥の抽き出しの全てに入り込んでいました。ピーターの影を探していたのです。洋服箪笥をぐちゃぐちゃにかき回して、どの服のポケットもみんな引っ張り出してしまいました。それは本当は、明かりなどではありませんでした。それはあまりにも素早く動いてこんな光を発していたのですが、一瞬動きを止めた時には、実は妖精であることが分かりました。人の手程の長さもなく、でもまだぼっと光っていました。この妖精はティンカー・ベルという名の女の子で、襟ぐりを四角く大きくとった素敵な枯れ葉のガウンを身にまとっていました。このガウンを着ている時、この子の体つきは一番可愛く見えるのでした。彼女は幾分“太め”の体つきだったのです。

 ピーターが連れているティンカー・ベルは、ここではっきりと“フェアリー”と呼ばれている。このお話の主人公であるピーターとは妖精なのか、神なのか、その正体に対して作者の描き方は、明らかに自覚的なのである。このことは、この作品の背後にある思想的・宗教的主題に関わる重要な事実である。

用語メモ
 EMBONPOINT:フランス語で“ぷっくりとした体つき”のことである。妖精にもデブもいれば、ブスもいる、という卑近な感覚の描き方は、かつて妖精の担っていた高邁で崇高な霊的属性を打ち壊す視点を暗示している。




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