Archive for 06 January 2006

06 January

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 51


 But for the moment Wendy was shocked. "You conceit," she exclaimed, with frightful sarcasm; "of course I did nothing!"
 "You did a little," Peter said carelessly, and continued to dance.
 "A little!" she replied with hauteur; "if I am no use I can at least withdraw," and she sprang in the most dignified way into bed and covered her face with the blankets.
 To induce her to look up he pretended to be going away, and when this failed he sat on the end of the bed and tapped her gently with his foot. "Wendy," he said, "don't withdraw. I can't help crowing, Wendy, when I'm pleased with myself. " Still she would not look up, though she was listening eagerly. "Wendy," he continued, in a voice that no woman has ever yet been able to resist, "Wendy, one girl is more use than twenty boys."
 Now Wendy was every inch a woman, though there were not very many inches, and she peeped out of the bedclothes.
 "Do you really think so, Peter?"
 "Yes, I do."
 "I think it's perfectly sweet of you," she declared, "and I'll get up again," and she sat with him on the side of the bed. She also said she would give him a kiss if he liked, but Peter did not know what she meant, and he held out his hand expectantly.

 けれども一瞬、ウェンディは唖然としたのでした。「自惚れ屋さんね。」呆れ返ってしまって、叫びました。「私は、何にもしなかったという訳ね。」
 「君だって少しは手伝ってくれたよ。」ピーターは気にもかけずに言うと、踊り続けました。
 「少しだけですって!」ウェンディは、肩を聳やかせながら叫びました。「私があまりお役に立てないというのでしたら、お引き取りした方がよろしいですわね。」こう言ってウェンディは、これ以上ないという程の威厳のある物腰でベッドの中に飛び込み、毛布の下に顔を隠してしまいました。
 ウェンディに顔を出させようと思って、ピーターは部屋から出て行くような素振りを見せました。でも、それではだめだと分かると、ピーターはベッドの端に腰を掛けて、足でそっとウェンディをつっ突きました。「ウェンディ、お引き取りしないでよ。僕はうれしくなったら、歌い出さずにはいられないんだ。」ウェンディはまだ顔を上げようとはしませんでした。じっと聞き耳を立ててはいたのですが。「ウェンディ、」ピーターは、女だったら誰も抗うことの出来なかった声で言いました。「女の子一人で、男の子20人分以上の役に立つよ。」
 ウェンディは端から端まで全て女の子でした。勿論そんなに大きな幅はありませんでしたけれど。夜具の隙間からウェンディは顔を覗かせました。
 「本当にそう思う?ピーター。」
 「本当さ。」
 「それなら素敵だわ。」ウェンディは言いました。「じゃあ、出てくるわ。」ウェンディはピーターと並んでベッドに腰掛けました。それからウェンディは、キスしてあげてもいいわよ、と言ったのですが、ピーターにはそれが何のことか分からないようでした。そして、何か渡してもらえると思い込んで、片手を差し出したのです。

 幼児的な自己満足の世界にどっぷりと浸かり込んでいる、一種の我全主義の世界が、ピーターの示すものに他ならないようだ。

用語メモ
 hauteur:“尊大”、“高慢”に当たるフランス語。英語なら“haughtiness”が該当する。“haughty”に“gh”が含まれるのは、“naughty”からの類推である。




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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中



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