Archive for 15 January 2006

15 January

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 60


 "Out with the light! Hide! Quick!" cried John, taking command for the only time throughout the whole adventure. And thus when Liza entered, holding Nana, the nursery seemed quite its old self, very dark, and you would have sworn you heard its three wicked inmates breathing angelically as they slept. They were really doing it artfully from behind the window curtains.
 Liza was in a bad temper, for she was mixing the Christmas puddings in the kitchen, and had been drawn from them, with a raisin still on her cheek, by Nana's absurd suspicions. She thought the best way of getting a little quiet was to take Nana to the nursery for a moment, but in custody of course.
 "There, you suspicious brute," she said, not sorry that Nana was in disgrace. "They are perfectly safe, aren't they? Every one of the little angels sound asleep in bed. Listen to their gentle breathing."
 Here Michael, encouraged by his success, breathed so loudly that they were nearly detected. Nana knew that kind of breathing, and she tried to drag herself out of Liza's clutches.
 But Liza was dense. "No more of it, Nana," she said sternly, pulling her out of the room. "I warn you if bark again I shall go straight for master and missus and bring them home from the party, and then, oh, won't master whip you, just."

 「灯りを消して、隠れろ。急げ。」ジョンが叫びました。これが、ジョンがリーダーらしく振舞った、唯一の時となりました。そうして、リザがナナを押さえつけながら入って来た時には、子供部屋はいつもと全く変わらない様子に見えました。真っ暗で、3人の悪童達は、天使のように無邪気な寝息を立てていたと思えたことでしょう。でも実際には、カーテンの後ろからわざとそんな寝息を立ててみせていたのです。
 リザは不機嫌でした。台所でクリスマス・プディングの材料を混ぜているところを引っ張り出されてきたからです。ほっぺたには干しぶどうがくっついたままでした。みんなナナが馬鹿げた邪推をするからです。リザは平安を得る一番いい方法は、しばらくの間ナナを子供部屋に連れて来ることだと考えたのです。でも勿論閉じ込めるためです。
 「ほらね、お馬鹿さん。」ナナに恥をかかせることを厭うこともなく、リザは言いました。「みんな、何の問題もないじゃない。一人残らずベッドでぐっすりと眠ってるわ。この子達の穏やかな寝息を聞いてごらんなさい。」
 ここのところでマイケルは、自分達の成功に気を良くしてあまりにも大きな寝息を立てたものですから、もう少しで見つかってしまうところでした。ナナはこういう類いの寝息の正体は良く分かっていました。そしてナナはリザの手から身を振りほどこうとしたのです。
 けれどもリザはあまりにも頑なでした。「もう、止めなさい。ナナ。」厳しい口調で言うと、ナナを部屋の外に引きずり出してしまいました。「いいこと。今度吠え立てたらね、まっすぐ旦那さまと奥様のところに駆け付けて、お家に戻って来て頂くからね。そうしたら旦那さまは、あんたのことをひっぱたくよ。」

 邪悪な子供達とふてぶてしい子守りである。可哀想なのはナナばかりである。作者は決して子供達をかばいだてすることはない。

用語メモ
 artfully:“artful”で、“狡猾な”、“巧妙な”の意味となる。“cunning”、“crafty”と同様のニュアンスを持つ。
 dense:“ひどく愚かな”、“鈍い”の意味である。



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