Archive for 17 January 2006

17 January

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 62


 He showed them again.
 "You're so nippy at it," John said, "couldn't you do it very slowly once?"
 Peter did it both slowly and quickly. "I've got it now, Wendy!" cried John, but soon he found he had not. Not one of them could fly an inch, though even Michael was in words of two syllables, and Peter did not know A from Z.
 Of course Peter had been trifling with them, for no one can fly unless the fairy dust has been blown on him. Fortunately, as we have mentioned, one of his hands was messy with it, and he blew some on each of them, with the most superb results.
 "Now just wiggle your shoulders this way," he said, "and let go."
 They were all on their beds, and gallant Michael let go first. He did not quite mean to let go, but he did it, and immediately he was borne across the room.
 "I flewed!" he screamed while still in mid-air.
 John let go and met Wendy near the bathroom.
 "Oh, lovely!"
 "Oh, ripping!"
 "Look at me!"
 "Look at me!"
 "Look at me!"
 They were not nearly so elegant as Peter, they could not help kicking a little, but their heads were bobbing against the ceiling, and there is almost nothing so delicious as that. Peter gave Wendy a hand at first, but had to desist, Tink was so indignant.
 Up and down they went, and round and round. Heavenly was Wendy's word.
 "I say," cried John, "why shouldn't we all go out?"
 Of course it was to this that Peter had been luring them.
 Michael was ready: he wanted to see how long it took him to do a billion miles. But Wendy hesitated.
 "Mermaids!" said Peter again.
 "Oo!"
 "And there are pirates."
 "Pirates," cried John, seizing his Sunday hat, "let us go at once."

 ピーターは、もう一度やって見せました。
 「ちょっと早過ぎるよ。もう少しゆっくりやってみてくれないかな。」ジョンが言いました。
 ピーターはゆっくりのと、素早くのと、両方やって見せました。「よし分かったぞ、ウェンディ。」ジョンが叫びました。でもすぐに、全然分かってないことが分かりました。誰一人として、1インチも飛び上がることの出来るものはいませんでした。マイケルでさえ2つのシラブルのある単語を知っており、ピーターはAとZの違いさえ知らないというのに。
 勿論、ピーターは彼等をもてあそんで、ふざけていたのです。妖精の粉を吹きかけてもらわない限り、飛ぶことなんてできはしないのです。幸運なことに、もう既にお話しした通り、ピーターの片手には妖精の粉がべっとりついていました。ピーターはその粉を子供達一人ずつに吹きかけました。その結果は素晴らしいものでした。
 「こんな風に肩を揺すぶるんだ。そして、飛び上がる。」ピーターが言いました。
 子供達は、みんな自分のベッドの上に乗っていました。そしてマイケルが最初に浮き上がりました。自分ではそのつもりはなかったのですが、体が浮いたと思うと、部屋をよぎってすべっていました。
 「飛んだよ!」宙に浮いたまま、マイケルは叫びました。
 ジョンも飛び上がり、お風呂のあたりでウェンディと出会いました。
 「すてきね。」
 「すごいぞ。」
 「見て!」
 「見て!」
 「見て!」
 子供達は、ピーター程優雅な姿勢をとることはできませんでした。ちょっと足をばたばたさせなければなりませんでした。でも頭は天井の真下のあたりでゆらゆら浮き沈みしていました。これほど愉快なことはありませんでした。ピーターは、最初はウェンディに手を差し伸べたのですが、ティンクがあまりに不機嫌なので、引っ込めなくてはなりませんでした。
 上に上がったり、沈んだり、ぐるぐる回ったりしました。「最高よ。」と言ったのはウェンディでした。
 「ねえ、みんなで外に出てみようよ。」ジョンが言いました。
 勿論、ピーターが子供達を誘い込んだのは、そうするためでした。
 マイケルはもう用意ができていました。1兆マイル飛ぶにはどれだけ時間がかかるか、試してみたいと思ったのです。でも、ウェンディはためらっていました。
 「人魚だよ。」ピーターが言いました。
 「うーん。」
 「海賊もいるよ。」
 「海賊だって?すぐに出発だ。」ジョンが、よそ行き用のシルク・ハットを手に取りながら言いました。

 ピーターの世俗的知識に対する無知と、彼の持つ超越的能力との間の微妙な関係が暗示されている。最初に宙に浮き上がったのが、最も年少のマイケルであったことも興味深い。

用語メモ
 trifle:形容詞なら“些細な”、“つまらない”の意味。ここでは動詞として用いられているので、“人を馬鹿にしてもてあそぶ”の意味である。
 billion:イギリスでは“1兆”、アメリカでは“10億”の意味で用いられる。



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