Archive for 10 January 2006

10 January

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 55


 He let poor Tink out of the drawer, and she flew about the nursery screaming with fury. "You shouldn't say such things," Peter retorted. "Of course I'm very sorry, but how could I know you were in the drawer?"
 Wendy was not listening to him. "O Peter," she cried, "if she would only stand still and let me see her!"
 "They hardly ever stand still," he said, but for one moment Wendy saw the romantic figure come to rest on the cuckoo clock. "O the lovely!" she cried, though Tink's face was still distorted with passion.
 "Tink," said Peter amiably, "this lady says she wishes you were her fairy."
 Tinker Bell answered insolently.
 "What does she say, Peter?"
 He had to translate. "She is not very polite. She says you are a great ugly girl, and that she is my fairy.
 He tried to argue with Tink. "You know you can't be my fairy, Tink, because I am an gentleman and you are a lady."
 To this Tink replied in these words, "You silly ass," and disappeared into the bathroom. "She is quite a common fairy," Peter explained apologetically, "she is called Tinker Bell because she mends the pots and kettles."
 They were together in the armchair by this time, and Wendy plied him with more questions.
 "If you don't live in Kensington Gardens now -- "
 "Sometimes I do still."
 "But where do you live mostly now?"
 "With the lost boys."
 "Who are they?"
 ピーターはティンクをタンスの抽き出しから出してあげました。ティンクは怒り狂って叫びながら、部屋の中を飛び回りました。「そんなことを言っちゃいけない。」ピーターは言いました。「そりゃ、閉じ込めちゃったのは悪かったけど、君が抽き出しの中にいるなんて、分かる訳ないだろ。」
 ウェンディは、ピーターの言葉など聞いてはいませんでした。「ねえ、ピーター。この子がちょっと止まってくれて、私に姿を見せてくれたらいいんだけど。」
 「妖精達は、滅多に動きを止めることはないんだ。」ピーターは答えました。でもウェンディは、一瞬だけ妖精がカッコー時計の上にとまって羽を休めるのを見ることができました。「まあ、なんて可愛いんでしょう。」ウェンディは叫びました。ティンクの顔はまだ怒りのために歪んでいたのですが。
 「ティンク、このお嬢さんはね、君がこの子の妖精になってくれたらなって、言うんだ。」ピーターは愛想よく言いました。
 ティンカー・ベルは、何かひどいことを言って答えました。
 「何て言ってるの?ピーター。」
 ピーターは翻訳してあげました。「この子はあまり礼儀正しくないんだ。君はね、でっかい醜い娘だって。それから、ティンクはもう僕の妖精なんだって。」
 ピーターはなんとかティンクを説得しようとしました。「ティンク、君は分かってるはずだろ。僕の妖精にはなれないんだ。僕は男の子で、君は女の子だからね。」
 これに対してティンクが返したのは、このような言葉でした。「この、どじ野郎。」そう言うと、お風呂に飛んでいってしまいました。「ティンクは身分の低い妖精なんだ。お鍋や、やかんを修理するから、ティンカー・ベルって呼ばれているんだ。」ピーターは済まなそうに言いました。
 ウェンディとピーターは、今度は肘掛け椅子に並んで座りました。ウェンディはもっと色んな質問をしました。
 「じゃあ、今はケンジントン公園には暮らしていないのね。」
 「まだ時々はいるけどね。」
 「でも今はどこにいるの?」
 「ロスト・ボーイ達と一緒だね。」
 「ロスト・ボーイって?」

 男の子には男の妖精、女の子には女の妖精と決まっていると、ピーターによって語られていることは、妖精の持つ人間存在の分身としての要素をあらわしている。ウェンディが妖精に対して大きな憧れの気持ちを抱きながら、ピーターに対しては同様の感情を抱いていないらしいのは、興味深い。少なくとも、ピーターは妖精ではない。

用語メモ
 great:=huge。“体が大きい”の意味である。
 tinker:tinkerとは、金属製品を繕う“鋳掛け屋”のこと。
 common:上流階級に属さない、下級の



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参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中



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