Archive for 21 January 2006

21 January

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 66


 "Do be more polite to him," Wendy whispered to John, when they were playing "Follow my Leader."
 "Then tell him to stop showing off," said John.
 When playing Follow my Leader, Peter would fly close to the water and touch each shark's tail in passing, just as in the street you may run your finger along an iron railing. They could not follow him in this with much success, so perhaps it was rather like showing off, especially as he kept looking behind to see how many tails they missed.
 "You must be nice to him," Wendy impressed on her brothers. "What could we do if he were to leave us!"
 "We could go back," Michael said.
 "How could we ever find our way back without him?"
 "Well, then, we could go on," said John.
 "That is the awful thing, John. We should have to go on, for we don't know how to stop."
 This was true, Peter had forgotten to show them how to stop.
 John said that if the worst came to the worst, all they had to do was to go straight on, for the world was round, and so in time they must come back to their own window.
 "And who is to get food for us, John?"
 "I nipped a bit out of that eagle's mouth pretty neatly, Wendy."
 "After the twentieth try," Wendy reminded him. "And even though we became good at picking up food, see how we bump against clouds and things if he is not near to give us a hand."

 「ピーターには、もっと丁寧な態度をとるのよ。」みんなで“大将ごっこ”をしている時に、ウェンディはジョンにささやきました。
 「じゃあ、ピーターに威張り散らすのは止めるように言ってよ。」ジョンは言いました。
 ピーターは、大将ごっこをしている時に、海の水面ぎりぎりのところまで降りていって、通りかかるサメの尾に手を触れるのでした。丁度、通りで子供達が、鉄格子の柵に手を触れながら走っていくのと同じような具合です。子供達は、ピーターのこの動作をうまく真似ることができませんでした。だから、やはりこれは、威張り散らしていると思われてもしかたがないでしょう。ピーターが、子供達がサメの尾に触れ損なうのを、後ろで見ながら数えたりしているところなどは、なおさらです。
 「ピーターの機嫌を損ねては、駄目なの。」ウェンディは、兄弟達に注意しました。「もしも私達を見捨てて、ピーターが行ってしまったら、どうするの。」
 「戻ればいいじゃないか。」マイケルが言いました。
 「ピーターがいなかったら、どうやって戻る道を見つけられるの?」
 「それなら、先に進めばいいさ。」ジョンが言いました。
 「それが大変なのよ、ジョン。行き続けるしかないのよ。だって、私達は止まり方を知らないでしょ。」
 これは本当でした。ピーターは、子供達に止まり方を教えるのを、忘れていたのです。
 ジョンは、最悪の事態になったならば、真っ直ぐ進みさえすればいい、何故なら地球は丸いんだから、そのうちお家の窓のところまでたどりつける筈だ、と言いました。
 「じゃあ、誰が食べ物を見つけてくれるの、ジョン?」
 「僕は、あの鷲の口からうまくかすめ取ることができたよ。ウェンディ。」
 「20回も失敗してからでしょ。」ウェンディが指摘しました。「それに、もしも食べ物を取り上げることが上手になったとしても、ピーターが近くにいて手伝ってくれなければ、雲だの何だのにぶつかってばかりでしょ。」

 ピーターが子供達を現実的な危険にさらしていることが忘れずに言及されていることは、ファンタシー文学に内在しているロマン主義的宗教性の持つ、危険な側面を反映していると考えることができる。この危険性に対する明確な自覚のみにおいても、本作品はアンチ・ファンタシー的要素を色濃く備えたものであるといえる。

用語メモ
 "Follow my Leader":"Follow the Leader"ともいう。大将になった者のする通りの動作を真似て行い、失敗すると罰を受ける。




「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◆「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◆ アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◆ ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中




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