Archive for 23 January 2006

23 January

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 68


 Of course this was rather unsatisfactory. However, to make amends he showed them how to lie out flat on a strong wind that was going their way, and this was such a pleasant change that they tried it several times and found they could sleep thus with security. Indeed they would have slept longer, but Peter tired quickly of sleeping, and soon he would cry in his captain voice, "We get off here." So with occasional tiffs, but on the whole rollicking, they drew near the Neverland; for after many moons they did reach it, and, what is more, they had been going pretty straight all the time, not perhaps so much owing to the guidance of Peter or Tink as because the island was looking for them. It is only thus that any one may sight those magic shores.
 "There it is," said Peter calmly.
 "Where, where?"
 "Where all the arrows are pointing."
 Indeed a million golden arrows were pointing it out to the children, all directed by their friend the sun, who wanted them to be sure of their way before leaving them for the night.
 Wendy and John and Michael stood on tip-toe in the air to get their first sight of the island. Strange to say, they all recognized it at once, and until fear fell upon them they hailed it, not as something long dreamt of and seen at last, but as a familiar friend to whom they were returning home for the holidays.

 当然、こんなことを言われても納得できるものではありません。でもかわりに、ピーターは目的地に向かって吹く強い風の上に体を横たえて乗る方法を教えてくれました。これはとても面白い飛び方だったので、子供達は何度かこのやり方を試してみて、こうすれば安全に眠っていけることが分かりました。実際、子供達はもっと眠っていたかった筈でした。けれども、ピーターは眠ることにもすぐに飽きてしまうのです。そして、逆らいようのない声で「ここで止まるぞ。」と言うのです。そういう訳で、時折はちょっとしたいさかいもあったものの、全体としては浮かれ騒ぎながら、みんなはネバーランドに近付いていったのです。何か月か飛んだ後、彼等はこの島に到着したのでした。それに、実はずっと方向も間違わずに飛び続けてきていたのです。それはおそらく、ピーターやティンクが案内をしてくれたためではなく、島の方が子供達を求めていたためでした。誰であれこの魔法の島を目にすることができるのは、そういう場合に限られるのです。
 「ほら、そこだよ。」ピーターは静かに言いました。
 「どこだい?」
 「矢がみんな指し示している方さ。」
 なるほど、百万もの金の矢が島の方角を子供達に示してくれていました。お友達のお日さまが、夜になって立ち去る前に、道がよく分かるようにとしてくれたことでした。
 ウェンディとジョンとマイケルは、宙に浮いたままつま先立ちになって、始めて見る島の様子をうかがいました。おかしなことだけど、子供達はみんな一目でそれが分かりました。そして恐怖の念が彼らを包むまでは、彼らは歓声をあげて島を受け入れたのでした。長い間夢に見続けてきてようやく目にすることが出来たものなんかではなく、お休みの間に戻って来て出会う、親しい友達であるかのように。

 ネバーランドの方が子供達を求めていた、と語られているところに、ネバーランドと子供達との隠れた近縁性が暗示されている。ネバーランドは、人々の意識の内部に存在する世界なのである。だから、これを同定するのはたやすい。しかし自身の意識の世界の内部のものが、対象物として実体化し眼前に現れた時には、これまでに気付くことの無かった新たな不気味さを伴うことになる。分離した自我、すなわち“影”の持つ測り知れない不気味さである。

用語メモ
 rollicking:“浮かれ騒ぐこと”、“はしゃぎ回ること”である。世界の与えてくれる豊かな感興に疑いの念を抱くことなく満足し、全身全霊を持って受け入れる態度である。神の配剤に疑念を抱くことを覚えてしまうとこの感覚は失われてしまう。



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