Archive for 26 January 2006

26 January

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ


 His courage was almost appalling. "Would you like an adventure now," he said casually to John, "or would you like to have your tea first?"
 Wendy said "tea first" quickly, and Michael pressed her hand in gratitude, but the braver John hesitated.
 "What kind of adventure?" he asked cautiously.
 "There's a pirate asleep in the pampas just beneath us," Peter told him. "If you like, we'll go down and kill him."
 "I don't see him," John said after a long pause.
 "I do."
 "Suppose," John said, a little huskily, "he were to wake up."
 Peter spoke indignantly. "You don't think I would kill him while he was sleeping! I would wake him first, and then kill him. That's the way I always do."
 "I say! Do you kill many?"
 "Tons."
 John said "How ripping," but decided to have tea first. He asked if there were many pirates on the island just now, and Peter said he had never known so many.
 "Who is captain now?"
 "Hook," answered Peter, and his face became very stern as he said that hated word.
 "Jas. Hook?"
 "Ay."
 Then indeed Michael began to cry, and even John could speak in gulps only, for they knew Hook's reputation.

 ピーターの勇敢さは、驚くほどのものでした。「ちょっと冒険してみないかい?それともお茶を先にするのがいいかな?」何気なさそうに、ジョンに言うのでした。
 ウェンディは、急いで言いました。「お茶がいいわ。」マイケルは、ほっとしてウェンディの手を握りました。でもジョンはマイケルより勇敢なので、ちょっと迷いました。
 「どんな冒険なの?」ジョンは注意深く尋ねました。
 「丁度真下の草原で、海賊が一人眠っているんだ。もし良かったら、降りていって殺してやろうよ。」ピーターが言いました。
 「そんな奴、僕には見えないな。」しばらく黙った後、ジョンは言いました。
 「僕には見えるよ。」
 「ひょっとして、目を覚ましてしまうかもしれないよ。」ジョンは、ちょっとかすれた声で言いました。
 ピーターは苛立った声で言いました。「君は、僕があいつを眠ったまま殺そうとしているなんて思ってるのかい。最初に目を覚まさせて、それから殺してやるんだよ。それが僕のいつものやり方さ。」
 「ねえ。大勢人を殺したことがあるのかい?」
 「そりゃ何人もさ。」
 ジョンは、すばらしいね、とは言ったのですが、お茶を先にする方を選びました。島には今大勢の海賊がいるのか尋ねてみました。するとピーターの答えは、今までにこれほど大勢いたことはない、ということでした。
 「親分は誰なの?」
 「フックさ。」ピーターは答えました。憎い敵のこの名前を語る時には、ピーターの顔はとても険しいものになりました。
 「ジャス・フックかい?」
 「そう。」
 これを聞いて、マイケルは泣き出しました。そしてジョンでさえ、息を詰まらせながらでしか話すことができなくなりました。二人ともフックの噂は良く知っていたのです。

 ピーターは、食べないが殺しはする。ピーターにとっては、守るべき理念としての正義などというものは無く、常に愉しみを与えてくれる遊びとしての冒険があるだけである。そしてピーターは、常により面白く遊べるゲームを選択する。結果的にそれがフェアプレイとなるのである。
 子供達は何故かフックのことをすでに知っている。ピーターとネバーランドの場合と同様に、フックもまた子供達の意識の内部にあったものである。これは、フックという存在の深い秘密に関わる重要な事実なのである。

用語メモ
 pampas:南米の、アマゾン河より南に広がる大草原のことである。ロンドンを飛び立って海をいくつか越えたその先に、パンパスの広がるネバーランドがあることになる。地勢的な位置関係だけでなく、その他様々の現実世界の関係性を超越した多くの矛盾を含む世界としてネバーランドが語られていることはことさら興味深い事実である。


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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中



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