Archive for 28 January 2006

28 January

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 73


 For the moment they were feeling less eerie, because Tink was flying with them, and in her light they could distinguish each other. Unfortunately she could not fly so slowly as they, and so she had to go round and round them in a circle in which they moved as in a halo. Wendy quite liked it, until Peter pointed out the drawbacks.
 "She tells me," he said, "that the pirates sighted us before the darkness came, and got Long Tom out."
 "The big gun?"
 "Yes. And of course they must see her light, and if they guess we are near it they are sure to let fly."
 "Wendy!"
 "John!"
 "Michael!"
 "Tell her to go away at once, Peter," the three cried simultaneously, but he refused.
 "She thinks we have lost the way," he replied stiffly, "and she is rather frightened. You don't think I would send her away all by herself when she is frightened!"
 For a moment the circle of light was broken, and something gave Peter a loving little pinch.
 "Then tell her," Wendy begged, "to put out her light."
 "She can't put it out. That is about the only thing fairies can't do. It just goes out of itself when she falls asleep, same as the stars."
 "Then tell her to sleep at once," John almost ordered.
 "She can't sleep except when she's sleepy. It is the only other thing fairies can't do."
 "Seems to me," growled John, "these are the only two things worth doing."
 Here he got a pinch, but not a loving one.

 その時、子供達は、先程までのように不安を覚えてはいませんでした。ティンクが一緒に飛んでいたからです。ティンクの光のお陰で、子供達はお互いの姿をはっきりと見ることができました。残念なことに、ティンクは子供達ほどゆっくり飛ぶことができませんでした。そういう訳で、ティンクはぐるぐると子供達の周りを飛び、子供達は光の輪に包まれて進んでいたのです。ウェンディは、これがとても素敵だと思いました。けれどもピーターが、困ったことがあるのを指摘しました。
 「ティンクが言ってる。海賊達が、暗くなる前に僕らの姿を見つけて、ロング・トムを引き出したんだそうだ。」
 「大砲かい?」
 「その通り。そして海賊達には、ティンクの光が見えているに違いない。僕らがこの光の近くにいると考えたら、きっとぶっ放すぞ。」
 「ウェンディ!」
 「ジョン!」
 『マイケル!』
 「ティンクに、直ぐにあっちに行くように言ってよ。ピーター。」3人は同時に叫びました。でもピーターは、駄目だと言うのです。
 「ティンクは、僕らが道に迷ったと思ってる。」ピーターはこわばった感じで答えました。「ティンクは、かなり怖がっているんだ。そんな時、僕がティンクに一人であっちに行かせるなんてできないだろ。」
 一瞬、光の輪が壊れて、何かがピーターの体を、優しくつねりました。
 「じゃあ、ティンクに光を消してくれるように言ってちょうだい。」ウェンディが懇願しました。
 「ティンクは、自分の光を消すことはできないんだ。それが、妖精にすることのできない唯一のことだね。ティンクが眠りに落ちた時、自然に光は消えるんだ。星と同じだね。」
 「じゃあ、直ぐに眠るように言ってやってよ。」
 「ティンクは、眠い時じゃないと眠ることはできないね。それが、妖精にすることのできない、もう一つのことかな。」
 ジョンがうめくように言いました。「その二つこそ、今僕らがしなくちゃいけないことだと思うな。」
 その途端、ジョンもつねられてしまいました。でも今度は優しいのではありませんでした。

 行く先には、様々な危険が子供達を待ち受けている。実体化した夢の中ではそれは全て本物の危機である。しかしピーターにとってのみは、全てがスリルを楽しむためにだけ存在する、他愛のない遊戯と変りがない。

用語メモ
 eerie:薄気味悪い、不安なことである。自分自身の願望が実体化して眼前に姿を現した時には、親近感とは正反対の印象を与えることとなる。磁石が分割された途端に、その極性が分離するかのようである。“attraction”の効果と“repulsion”の効果は、表裏一体の関係にある。




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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中




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