Archive for 05 January 2006

05 January

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 50


 Fortunately she knew at once what to do. "It must be sewn on," she said, just a little patronisingly.
 "What's sewn?" he asked.
 "You're dreadfully ignorant."
 "No, I'm not."
 But she was exulting in his ignorance. "I shall sew it on for you, my little man," she said, though he was tall as herself, and she got out her housewife, and sewed the shadow on to Peter's foot.
 "I daresay it will hurt a little," she warned him.
 "Oh, I shan't cry," said Peter, who was already of the opinion that he had never cried in his life. And he clenched his teeth and did not cry, and soon his shadow was behaving properly, though still a little creased.
 "Perhaps I should have ironed it," Wendy said thoughtfully, but Peter, boylike, was indifferent to appearances, and he was now jumping about in the wildest glee. Alas, he had already forgotten that he owed his bliss to Wendy. He thought he had attached the shadow himself. "How clever I am!" he crowed rapturously, "oh, the cleverness of me!"
 It is humiliating to have to confess that this conceit of Peter was one of his most fascinating qualities. To put it with brutal frankness, there never was a cockier boy.

 幸運なことに、ウェンディはすぐにどうしたらいいのか分かりました。「縫い付けなくちゃだめね。」ウェンディは、ちょっとだけお姉さんぶった感じで言いました。
 「縫い付けるって、どういうこと?」ピーターは尋ねました。
 「本当に何にも知らないのね。」
 「そんなことはないよ。」
 でもウェンディは、ピーターが何にも知らないことがうれしくてたまらないのでした。「私が、縫い付けてあげますからね、ぼうや。」ウェンディは言いました。ピーターはウェンディと変わらない背丈があったのですけれど。それからウェンディは裁縫箱を取り出して、ピーターのかかとに影を縫い付けてあげたのです。
 「ちょっと痛いかもしれないわよ。」前もって言っておきました。
 「泣いたりなんか、するもんか。」ピーターは言いました。ピーターはもうすでに、これまでに自分が泣いたことなど一度もないと信じきっていました。そしてピーターは歯を噛み締め、本当に泣きませんでした。そして影は少しだけしわになってはいたものの、ちゃんとピーターのものになりました。
 「アイロンをかけておけばよかったのかな。」ウェンディは考え深げに言いました。けれどもピーターは、男の子らしく見かけなんかは気にかけていませんでした。大喜びで跳ね回っていたのです。なんとピーターは、この幸福がウェンディのお陰であることさえ、もうすでに忘れてしまっていました。ピーターは、自分の力で影をくっつけたつもりになっていたのです。「なんてえらいんだ、僕は。」勝ち誇ったように、喉を鳴らして笑っていました。「えらいなあ。」
 ピーターのこのような自惚れが、この子の最も魅力的な性質の一つになっていることを申し上げなくてはならないのは、とても残念なことです。あからさまに言ってしまえば、これほど自惚れやの子はかつていたためしがありませんでした。

 お話を物語る作者は、自身の判断と感想を含めながら、ピーターとウェンディのやり取りを描写していく。ここに描かれているのは、子供達に特有の可愛さなのだろうか?それとも男性と女性のそれぞれに特有の、人間としての性なのだろうか?

用語メモ
 crow:鴉、あるいは鴉の鳴き声も“crow”だが、ここでは雄鶏(cock)が威勢よく時の声を上げることである。雄鶏のように気取った、ほこらかな様子が“cocky”である。





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