Archive for 26 April 2017
26 April
フィギュア文化論 講座テキスト
フィギュア
文化論
“初音ミク”という存在/現象/人格を考える
2017 「こんにちの文化」の講義ノートから
1回目 受講資格検定試験
本講座の受講を希望する方は、下の受講資格検定試験問題に解答して頂きます。内容判定を行い、受講資格が認められた方には、順次受講資格認定の通知をお送りします。受講者数が200人に達した時点で受付を終了します。
試験問題は以下のリンクからダウンロードして下さい。
2017 proficiency test for the course today's culture.docx
https://www.academia.edu/31960722/2017_proficiency_test_for_the_course_todays_culture.docx
上のリンクページには、これまでの各年度の受講資格検定試験の模範回答が公開されています。これらの記述を参考にして、答案作成を行ってください。
2011年度受講資格検定試験模範解答
2011 proficiency test for the course today's culture.docx
https://www.academia.edu/10801012/2011_proficiency_test_and_model_answer_for_the_course_TODAYS_CULTURE
回答は本コミュニティのスレッド「受講資格検定試験問題提出」にコメントを記入し、添付ファイルとして送信して下さい。
初音ミク同定、ミク成立条件
画像投稿サイト等にあった様々のミクを検証します。ミクがミクであるための最低限の条件は何なのか?どの要素が省略あるいは入れ替えられてもミクがミク足り得るのか?それぞれの具体例について検証します。
いずれかの要素が変化を被った結果もうミクとはいえない場合、変化形として別枠に分類すべきもの等、なるべく細分化した項目を設けてミク集合を整理してみて下さい。その他、紛らわしいもの、関連する興味深いもの等、検証対象となりそうな例があったら報告して下さい。
実際のフィギュア作品2体を例にして、鑑賞と考察の着眼点となる基準設定の実例を提示しました。これを参考にしてミクの同一性判断を行うための基軸要素と、フィギュア造形において同一性を主張するために配置された人格決定意味情報をいかに見つけ出すことができるかを、自分の好きな作品を対象にしてそれぞれに試みて下さい。
2回目 初音ミク原型と変化形
最初の初音ミクモデルがその特質の一部を別の要素と置き換える、あるいは省略もしくは付加を行うことにより、様々の新種が誕生していきます。これらの枝分かれの実質を、“軸”という概念を適用して捉えていきます。
初音ミクの一種である“レーシングミク”軸がどのように生成して、現在いかなる集合を構築するに至ったかを検証してみます。最初は分かりやすく、2010年モデルから2013年モデルまでの一覧表を作成することにより、その実態の認識を図ります。製品モデルを形成する“スケールモデル” “figma” “ねんどろいど”の3つの軸と各年度軸の積を交点としたマトリクス記述を用いて図表化した、以下のデータの内実を確認して下さい。空欄に正解の番号を補充するクイズの形式になっています。
Racing Miku Matrix
https://www.academia.edu/24947542/Racing_Miku_Matrix
2014年以降に得られたレーシングミク集合の拡張に対して、この図表にいかなる操作を加えることにより、現在存在するレーシングミクの全てをモデル化することが可能となるかを考えてみましょう。
X軸とY軸から成り立つ2次元の図表においては軸の数はこれ以上増やすことはできませんが、無限に軸を追加することができるn次元上の立体図表を仮定すれば、レーシングミクのみならず全てのミク集合、あるいは存在物の全体像をもこのマトリクス記述の展開の中に収めることが可能なはずです。
練習問題として、様々な属性記述をマトリクスを用いて表現する手法の例を示します。
1 個人属性記述
自分自身の構成要素となるものを、以下の書式に従って申告して下さい
Personal Attributes
https://www.academia.edu/10788131/Personal_Attributes
2 アリスゲーム2
本講座「こんにちの文化」という論理遊戯ゲームを開始する準備段階として、プレイヤーの基本設定を行う“初心者の館”あるいは“トレーニングルーム”に相当するステージです。名前や職業や装備だけでなく、もう少し込み入った設定をする必要があります。
Alice Game 2
https://www.academia.edu/9763948/Alice_Game_2
3 アリスゲーム2 模範解答
設定の一覧表作成の模範例を示します。各自で自分自身の属性記述設定を行って下さい。ポイントは、各項目の記載内容を自由に増加して“無限拡張”することができるという初期条件にあります。
Alice Game 2 Model Answer
https://www.academia.edu/9763982/Alice_Game_2_Model_Answer
テキストの記述と講義の進行
この講義では、教科書を読みながら解説を進めるというような進行方法は取りません。講義で語られた内容が、「論文」としての語彙と論述としてテキストでどのように記載されているかを自ら読み取って下さい。さらに、テキストを読めば分かるところは、別の角度から主題に迫ることができるように、講義では語りの位相を違えるように言葉を選び、論を展開しています。これらをテキストと音声録音データと照らし合わせて再確認して下さい。
討論の場や要求を明確にした設問に対する回答として、理解したことを自分の言葉を用いて適切にアレンジして語ることができて初めて、本当の理解を得たということができます。「分かったことにしておく」というようなごまかしの教育とは明確に異なるやり方で、「面白い話題について研究する」この講義は進められています。
悪乗り課題
2.5頭身という設定のフィギュアモデル“ねんどろいど”の紹介をしました。
さらに、「ねんどろいど化すれば誰でもかわいくなる」のか、この命題について検証するための手順として、“マツコデラックスのねんどろいど化”の課題を提示しました。アイデアとしては面白くても、相当な画力がなければ実際にイラストを描くのは大変なことですね。ここでは講義の場において、「思いついて語る」という表現行為が追求されていたことをご理解下さい。今後も同様の“無理難題”の思いつき課題が頻出することを覚悟しておいて下さいね。
同様に、自分でもこの手の“悪乗り課題”の変化形作成に挑戦して、アイデア概念化遊戯を試みるといいでしょう。あるいは見事に課題の要求に答えた作品や、切り返しの反論でもいいでしょう。
決まり切った“正解”や、望まれる通りの内容の無難な“レポート”ばかり書いていると、頭が腐ってしまいますからね。おもしろそうなのができたら、このスレッドに書き込みをお願いします。
レーシングミク集合立体化
2010年から2013年にかけては、レーシングミク集合は単一軸構成でしたが、2014年以降レーシングミクには新しい軸が加算されて、マトリクス記述を行うには図表を立体化する必要が生じてきました。この現象をテキストにおける記載の補完説明として書き加えるとしたら、どのような記述あるいは図表を用意する必要があるでしょうか?このような課題提示の基盤として、本講座テキストをさらに能動的に活用していきたいと思います。このような発想から、本講座のレポート主題の設定のあり方を模索していきましょう。
レーシングミクのモデル分岐
2013年度、2014年度から“EV Mirai”ヴァージョンが加わり、軸線が追加されました。それぞれに “figma” と“ねんどろいど” が揃えば、マトリクス上の組み合わせで、一気に種類が増えます。
レーシングミク 2013 ver. 1/8 完成品フィギュア
http://www.amiami.jp/top/detail/detail?gcode=FIGURE-003889
figma レーシングミク2013 EV MIRAI ver.
http://www.amiami.jp/top/detail/detail?gcode=FIGURE-006692
レーシングミク 2014 Ver. 1/8 完成品フィギュア
http://www.amiami.jp/top/detail/detail?gcode=FIGURE-007630
レーシングミク2014 EV MIRAI Ver. 1/7 完成品フィギュア
http://www.amiami.jp/top/detail/detail?gcode=FIGURE-010872
figma レーシングミク2014 EV MIRAI ver.
http://www.amiami.jp/top/detail/detail?gcode=FIGURE-010072
さらにカーレースの開催地ヴァージョンとして、“セパン”と“タイ”が加わります。2015年度も新たに発表されました。
レーシングミク セパンVer. 1/8 完成品フィギュア
http://www.amiami.jp/top/detail/detail?gcode=FIGURE-007032
レーシングミク タイVer. 1/8 完成品フィギュア
http://www.amiami.jp/top/detail/detail?gcode=FIGURE-014022
レーシングミク 2015 Ver. 1/8 完成品フィギュア
http://www.amiami.jp/top/detail/detail?scode=FIGURE-015917&page=rt_02
フィギュア作品の個別的特質による分類に加えて、製品ラインとしてのシリーズ作品分類という2種類の概念軸が存在することがマトリクス表記構成の検証により確かめられます。
これら全てを統合したあらゆる存在物の一覧表としてある“前段階存在”が、“原型”(アーキタイプ)と呼ばれるものです。 マトリクス(matrix)は“母体”という意味もあるので“原型”を表現するのにぴったりの概念なのです。
練習問題 マトリクス記述
マトリクス作成練習
01:プロトタイプを書き留める
以下の3モデルを“プロトタイプ”としておき、正式の製品名称を書き連ねます。
グッドスマイルカンパニー“キャラクター・ボーカル・シリーズ01:1/8初音ミク
http://www.goodsmile.info/ja/product/272/初音ミク.html
マックスファクトリー“キャラクター・ボーカル・シリーズ01:1/7初音ミク
http://www.goodsmile.info/ja/product/2526/初音ミク.html
グッドスマイルカンパニー“初音ミクLat 式”
http://www.goodsmile.info/ja/product/3095/初音ミク+Lat式+Ver.html
これは1行3列の行列を形成します
02:特質項目4つを加える
“髪の色” 、 “髪のボリューム” 、 “上着の色” 、 “アームカバー”の“行”を設けます。これで5行4列の行列が形成されます
03:7種のミクについて8つの特質項目を設ける
以下の4種のミクを付け加えます。
マックスファクトリー “初音ミク Tony ver.”
http://www.goodsmile.info/ja/product/2920/初音ミク+Tony+ver.html
“Racingミク”2010
http://www.amiami.jp/top/detail/detail?gcode=FIG-MOE-2343
初音ミクVN02 mix
http://www.goodsmile.info/ja/product/2750/初音ミク+VN02+mix.html
supercell feat 初音ミク ワールドイズマイン
http://www.goodsmile.info/ja/product/2419/supercell+feat+初音ミク+ワールドイズマイン+ブラウンフレーム.html
さらに特質項目4つを付け加えます。
“胸の大きさ” 、“シリアルナンバー” 、“音楽の有無” 、“原型師”
この結果は、9行8列の行列になります
ここまでの経過をエクセルのブックで保存しました。
Hatsune Miku matrix
https://www.academia.edu/32598770/Hatsune_Miku_matrix
このマトリクスを延長することにより、全ての初音ミクの一覧表を作成することができます。また、アスカからマトリクス記述を開始しても、マツコデラックスからマトリクス記述を開始しても、一覧表のどこかの部分がそれぞれ涼宮ハルヒ等の別キャラクターの属性記述パートを含み、無限延長した全体はあらゆる存在物を網羅するものとなるでしょう。
宇宙の全てを、無限延長したマトリクス表と対応させることが可能です。
各種存在物の特質をいかにマトリクスに反映させて一覧表示を図るか
以下のような課題点が挙げられます。
軸線概念の設定と項目内容記述をどのように工夫すればよいか
空白項目を充填する未知の存在を除外しない
新たな創造へと繋げるための軸線の追加アイデア
既存の他の製品やキャラクターの属質を適用する、あるいは統合を図る
マトリクス記述に平行して利用可能な記述原理を模索する
諸処の派生形や変種や亜種あるいは類似存在を見分けるための属性項目
“初音ミク”のみならずその部分集合である“レーシングミク”も、共に生成発展を行う途上にあり、定義領域の拡充が図られつつも、確定した定義には程遠い状態と言ってもよいでしょう。
そのような初音ミクが人格を持つとしたら、いかなる特質と条件においてそう判断することができるのか。今は人格を持つとは判断されないとしたら、今後どの時点でいかなる条件が充当された時に人格の生成が認められるのか。そのような「人格」とは、どこにどのようなものとしてあるものなのかを考えていきます。
3回目 人格の有無
昨年度に「こんにちの文化」で以下のアンケートを実施しました。
yes か no か、どちらかで答えて下さい。「初音ミクに人格はあるか?」
昨年度の回答例
「初音ミク」と「人格」の定義が与えられていないのにこんな質問答えられる筈がない
このような回答が生成されるということが、教育の弊害の実態を示しています。教育はしばしば、学生に考えることを中断させようとします。つまり、試験問題の解答を導出させようとはするが、目の前の現実と自分自身について深く本質的に考える機会を、放棄させようとするからです。だから全てが定義づけられた“数学”というゲームの前提に基づく“閉鎖空間”の内部で、与えられた設問に対して機械的な論証手続きに従った“証明”を等式の連鎖として返すことを要求したりする訳です。しかし我々が生を通じて感知する全ての事物と現象は、予め確定した定義を与えられているものなのでしょうか?
“初音ミク”という“存在”あるいは“疑似人格”について様々な角度から改めて考えるきっかけを与えるものとして上の質問は発せられたわけですが、本来の数学が持っていたような、“存在”と“人格”を新たな視点で考え直そうという発想を逆に阻害するような要因も、“教育”の現場には実際に存在するのです。
科学における世界と事物の関係の定義は、“真空空間”におけるそれぞれの引力を持つ“質量点”の運動と局所的な衝突という“力学作用”というモデルで与えられ、このような図式を用いて世界は捉えられていました。
ですから生命と感覚と意識を説明する術を科学は持ちません。これが哲学における“クオリア”と“ハードプロブレム”の問題です。“ミクらしい髪の色”、“ミクの与える感じ”、ミクを対象に抱く“萌え”をいかに記述し、理解するかを自らの感覚を用いて捉え直すことにより、初音ミクの“初音ミク性”は対象としてある物体に帰属するのか、あるいはそれを意識する精神作用の中にあるのかを考え直すことができます。さらに“定義”と呼ばれるものはどこからどのようなものとして与えられたのか、に対する疑問を抱くこともできるはずです。
そういう訳で、実は“人格”はそれを観察して認識する、あるいは記述して申告する操作を通して形成され、確立されるものとなります。「アリスゲーム2」は、自分存在を構築する諸要素の確認を通して、自己同一性を確証する一つの手段だったのです。
この作業の練習問題となる変化形として、第6次聖杯戦争に参加するためのエントリーシートを作成してみることにします。講座担当者の記入例を参考にして自分存在を再検証し、手強いサーヴァント達との戦いに備えて下さい。
(これはもともとは「時間芸術」で Fate/stay night を考察した時の応用問題として出題したものです。講座テキストでは第3章が、エロゲー『 Fate stay/night 』を対象にした、存在/現象/人格考察のパートになっています。)
6th Holy Grail War entry sheet
https://www.academia.edu/10787663/6th_Holy_Grail_War_entry_sheet
本テキストはデータとして以下のリンクからダウンロードすることができます。
https://www.academia.edu/32655868/Figurines_Study
10:58:03 |
antifantasy2 |
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