The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ　２０

Wherever she went, she searched for her people, but she found no trace of them, and in all the tongues she heard spoken along the road there was not even a word for them any more.

ユニコーンはどこに行って他のユニコーン達を探しても、仲間達の消息は全くみつかりませんでした。あちこちで耳にする人間達の言葉で、ユニコーンのことを呼ぶ言葉は、もう一つとして無かったのです。

　どの国に来ても、ユニコーンの姿がみつからないばかりか、人々がユニコーンのことを話すことさえ無かった。ユニコーンは世界から忘れ去られ、世界はユニコーンがかつて知っていたものとは全く異なったものとなっていたのである。これからユニコーンの経験として描かれることになる様々のエピソードは、我々の知っている現実世界の実態を、人間の常識とは全く異なった観点から暴き出していくことになる。キーワード "reality"と関連する。

用語メモ
　神話創成：あるがままの世の中の姿である現実が"reality"であるが、我々が夢想し、期待する、あるべき世界の姿は、何故かそれとは幾分異なるものであったりする。どうしてこれらの間の無慈悲な乖離が生じることとなったのかを説明する仮説として、神話や宗教があり、行動目的を定める思想が生まれたりもした。ファンタシー作品である本書においては、ユニコーンという指標的存在を用いて、新規の神話創成作業としてこれらの問いと解答を語る試みが展開されている。

メインページurl　http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/