Archive for 22 October 2004

22 October

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 22


"I have been hunted with bells and banners in my time," she told him. "Men knew that the only way to hunt me was to make the chase so wondrous that I would come near to see it. And even so I was never once captured."

「昔私を狩りたてようとするもの達は、鐘と旗を用いて私を追いました。人々は私を狩る唯一の方法は、狩りの仕方をとても派手やかなものにして、私が興味を持って近付いてくるようにする以外にないことを知っていたのです。それでも私は、一度たりとも捕まえられたことはありませんでした。」

 かつてユニコーンを知っていた人々がユニコーンを狩るのに用いた方法は、現代において支配的であるような実利的なやり方ではなく、狩る対象に対する崇敬の念を備えた、儀式的な形式美を備えたものであった。現代の功利主義的価値観とは全く異なった行動の在り方が信じられていたのである。

用語メモ
 様式と儀式:個々の事物の存在する意味と、それらの間の関係を保障する全体としての連関が確かにあってこそ、直接的な利益や関係性と結びつくことのない儀式的行為の意義が説得力のあるものとして主張され得る。“全体性”という要素を省いて、単なる惰性的な伝統として様式や儀式を理解しようとすれば、そこに得られるものは、かつて人々が信じていたものとは全く異なったものとなるだろう。

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(「最後のユニコーン」ノート、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」等を公開中)



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