Archive for 26 October 2004

26 October

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 26


Then one afternoon the butterfly wobbled out of a breeze and lit on the tip of her horn.

 そしてある日の午後、一匹の蝶がそよ風に吹かれて舞い出てきて、ユニコーンの角の先にとまりました。

 ユニコーンが出会った蝶は、不思議な予言をつぶやき、ユニコーンの探求の旅の赴く先を決定づけることになる。蝶の作品中における存在意義は、後出の猫ともども、ファンタシー文学の思想的特質を考える時、19世紀にロマン主義的な文芸作品の中で盛んに描かれたフェアリーの存在と比較して考察すると興味深い。
 これらは人間存在と、人間性に直接的な関わりを持つ倫理的原理の体現者との間に介在する、中間的存在として理解することのできるものである。あるいはまた蝶や猫は、自然・世界の奥行きを拡張する心的機能を体現した、異教の神の変化形としてもまた読解し得るものである。

用語メモ
 ロマン主義(Romanticism)とフェアリー:特有の宇宙論とシステム理論に基づいた、存在と現象、精神と物質、フィクションと現実の間の関連に対する統一的解式を主張する思想として、ロマン主義が改めて理解され直した時初めて、ファンタシー文学の中でフェアリーの示唆する微妙な位相が的確に把握されることとなるだろう。

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(「最後のユニコーン」ノート、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"、論文「ピーターの無知と不思議な知恵」 等を公開中)




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