Archive for 27 October 2004

27 October

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 27


"Death takes what man would keep," said the butterfly, "and leaves what man would lose. Blow, wind, and crack your cheeks. I warm my hands before the fire of life and get four-way relief."

 蝶は言いました。「死神は人の大事にしたいと思うものを奪い去り、そして人の捨ててしまいたいと思うものを残していく。頬を膨らまして、風よ吹け。私は命の火に両手をかざして暖をとり、四方から上納を得る。」

 蝶のセリフは脈絡の無い、無意味な言葉の羅列のように思われる。けれども実は、彼のつぶやく言葉はすべて古今東西の詩歌の放埒な連想となっているかのようである。彼の思考と連想は、芸術家的人間の無意識の集合体のような様相を示している。従って彼の言葉と行動は当然無責任で、気紛れで、矛盾に満ちている。けれども、だからこそ、全てのものの深いつながりを語る真実を告げてくれるものであるかもしれない。
 relief=(封建法)相続上納金、後継者が土地を相続する際、領主に支払った金。cf. heriot:相続上納物

用語メモ
 無意識(subconscious):個人としての自覚を失った希薄な、あるいは微小な心の奥底は、空間的隔たりと時代的隔絶を超えてあらゆる国の人々の精神と記憶に繋がっており、実は宇宙の全ての現象と存在物に関する理解をも可能にするものであるかもしれない。ファンタシーの魔法や予言を成立させるための思想的特質として前提となっている仮説である。


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(「最後のユニコーン」ノート、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"、 論文「キスと謎々」等を公開中)



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