Archive for 05 October 2004

05 October

The Last Unicorn『最後のユニコーン』読解メモ 5



She had killed dragons with it, and healed a king whose poisoned wound would not close, and knocked down ripe chestnuts for bear cubs.

 ユニコーンはこの角で龍を倒したこともありました。毒を受けた傷がどうしても癒えない王様を救ってやったこともありました。そしてまた、熟した栗の実を熊の子供達のために払い落としてやったこともありました。

 ドラゴンを殺すのも、王の負傷を癒すのも、伝説にある通りのユニコーンの属性である。熊の子に栗の実を落としてやるのはこの作品における付加的属性であるとともに、羅列の付け足しによるおふざけである。この“anticlimactic catalogue”の部分はBrian Atteberyによって、James ThurberのThe White Deerとの類似が指摘された。しかし本作品におけるこのような諧謔的な物語世界描述の手法は、より自省的なファンタシー文学作品提示の試みとして、主題そのものと密接に関連するものとなっている。キーワード“antifantasy”に該当する部分である。

用語メモ
“anticlimactic catalogue”:“anticlimax”(急遁法)の効果を用いた羅列。意味性を漸増的に累加して展開されることが予期されている筈の記述もしくは場面が、読者あるいは観客の期待に反してその絶頂に当たる部分で突然失速し、記述なり描写の初期の目的が頓挫してしまうかのような事態が招かれてしまうことにより、羅列あるいは反復が本来の意図と反した皮肉な意味で用いられる結果となる。

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