Archive for 14 November 2004

14 November

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 45


"The only rope that could hold her," she told him, "would be the cord with which the old gods bound the Fenris-wolf. That one was made of fishes' breath, bird spittle, a woman's beard, the miaowing of a cat, the sinews of a bear and one thing more. I remember--mountain roots."

「ユニコーンを縛ることのできるロープと言えば、古の神々がフェンリス・ウルフを縛るのに用いたものだけだろうね。」マミー・フォルチュナは言いました。「あれは、魚の息と鳥のつばと女の髭と猫の鳴き声と熊の腱と、それと何だったっけね、そうだ、山の根っこで出来ていたんだった。」

北欧神話に登場する怪物、Fenris-wolfを縛ることができたロープは、“魚の息と鳥のつばと女の髭と猫の鳴き声と熊の腱と山の根っこからできていた”、とされる。この世に存在し得ないものが材料としてあげられていることが分かる。魔法のメカニズムはナンセンスの原理として、現実世界の論理の限界を超越するものだからである。超越的真実の姿は現象世界的観点からは狂気として映るとも理解できる。この視点は本作品のantifantasy的描術行為の背後に潜む思想的前提となっている。

用語メモ
 魔法と狂気:これらは共に「謎」という言葉と連関してファンタシーの思想的前提条件を形成する。これらの間に存在するメカニズムを語る言葉として論理矛盾、二律背反の原理等の概念が採用され、仮構世界の描写における修辞法、比喩等についての論議へと発展していくこととなる。

和洋女子大学英文学科
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http://www.wayo.ac.jp/topics/boshuu.html
作家島田雅彦氏による講演・パフォーマンス <自由人の祈り>

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(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"、佐倉セミナー講義実況中継等を公開中)



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