Archive for 16 November 2004

16 November

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 47


Their draperies were gone, and they were now adorned with sad black banners cut from blankets, and stubby black ribbons that twitched in the breeze.

馬車の覆いは取り払われていました。そして馬車は今は、毛布を切り取って作った、くすんだ黒い色をした三角旗と、風に揺られてひくつくように震えるずんぐりとした黒いリボンで飾り立てられていました。

キーワード“antifantasy”に関連する部分である。格調高く、あくまでも高貴な、あるいは邪悪な存在を描こうとする潜在的願望を含んだ作品がファンタシーであるとするならば、ここに描かれたような、日常性とその些末さを誇張した諧謔的表現を、“antifantasy”と呼ぶことができる。典型的なファンタシー的要素(崇高)と楽屋落ち的な悪ふざけ(諧謔)が混在しているのがこの作品の特徴であり、またこのような機構がファンタシー文学そのものの心理的構造の中でいかに機能しているかを考察することが、翻ってファンタシー文学の思想的特質を理解する際の要点となると思われる。

用語メモ
 日常性:ロマンスや神話の世界と対照的な印象をもたらすのが、作品世界中に闖入する日常性である。同時代的な日常性をリアリズムとして描くことを旨としたのがノベル(小説)であると定義されるなら、ファンタシーは決定的にノベルとは異なるものである。しかしファンタシーの持つ性向が、神話やロマンスの世界よりも微妙にノベルの世界に近い部分を持っていることもまた事実である。

和洋女子大学英文学科
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作家島田雅彦氏による講演・パフォーマンス <自由人の祈り>

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(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト"Annotated Peter and Wendy"、佐倉セミナー講義実況中継等を公開中)




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