Archive for 18 November 2004

18 November

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 49


Its inside is an inferno, but its skin is so cold it burns.

ドラゴンの身体の内側には地獄の火が燃えています。けれどもその外皮はあまりにも冷たく、触れれば凍傷になるほどです。

 ルークの口上によるドラゴンについての説明である。古代、あるいは中世に支配的であった世界観をうかがうことができる。全宇宙を均一な等質の空間が占めている、というのがニュートン以来の科学的世界観であるのに対し、日常空間のあちこちに異次元空間が点在しているのが当たり前のものとして、中世以前の人々は考えていた。聖別された特殊な空間があると同時に、汚された邪悪な空間も存在する。天国も地獄も現世の日常空間と隣接して身近に確かに存在していた。このような緊迫した空間意識の復活を企図するのが、ファンタシー文学の特徴となる潜在的願望であるといえよう。

用語メモ
 均質な時間と空間:現代人の宇宙観を決定することとなったニュートンによって整備された現代科学思想は、全体的なシステムにおいても、個々の存在物の示す様相においても、不自然な飛躍の存在を許すことがない、観測と計算によって確実な推論を行うことが可能なものとして世界を捉えていた。これに対しファンタシーが主張する世界像は、時間・空間・存在物間の関係性のそれぞれに、積極的な動的飛躍を認めようとするものであるといえる。

和洋女子大学英文学科
「ポエトリー・リーディングの一日」のご案内
詳細
http://www.wayo.ac.jp/topics/boshuu.html
作家島田雅彦氏による講演・パフォーマンス <自由人の祈り>

メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"、佐倉セミナー講義実況中継等を公開中)





00:00:00 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks