Archive for 02 November 2004

02 November

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 33


"Unicorn. Old French, unicorne. Latin, unicornis. Literally, one-horned: unus, one and cornu, a horn. A fabulous animal resembling a horse with one horn."

「ユニコーン:古フランス語では“unicorne”、ラテン語では“unicornis”。字義は“一本角”。“unus”すなわち“一”と“cornus”すなわち“角”。一本の角を持ち、馬に似た姿をした想像上の生物。」

 ユニコーンの「私のことを知っている?」という問いに答えたと思われる蝶の言葉である。けれども蝶のこの言葉は実は、ユニコーンに関する辞書の項目からのそのままの引用になっているに過ぎない。脈絡も無く答えた“ユニコーン”という言葉の語源と字義の部分がこれである。
 この蝶の言葉に従えば、ユニコーンは現存しない、想像上の生き物に過ぎないということになる。この返答はユニコーン自身にとっては不満なものであるかもしれないが、本書『最後のユニコーン』の提示する仮構世界の存在論においては、“fabulous”(想像上の存在)という属性は、“リアル”であることに対して何の矛盾を来すこともない条件なのである。

用語メモ
 仮構世界(fiction):ファンタシーの提示する空想世界の存在様相に対して厳密な論理的理解を試みる“仮構世界存在論”というものが存在する。そこでは“非在性の存在物”を認めることにより、独立した可能世界の一つである作品世界の示す具体的遠近法と法則性が、観念空間内で極めて整然と主張されることになる。

公開授業のお知らせ
和洋女子大学学園祭
11月6日:”「最後のユニコーン」と魔法”
11月7日:”「最後のユニコーン」とsorrow”
両日共、午後1時より開催

公開授業の詳細:和洋女子大学TOPICS http://www.wayo.ac.jp/topics/eibun.html

メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

(『最後のユニコーン』注釈資料、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"、その他ファンタシー文学研究資料を公開中)




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