Archive for 21 November 2004

21 November

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 52


"And the satyr," the unicorn continued, "The satyr is an ape, an old ape with a twisted foot. The dragon is a crocodile, much more likely to breathe fish than fire. And the great manticore is a lion--a perfectly good lion, but no more monstrous than the others."

サテュロスの正体は、猿ね。足のねじ曲がった、年老いた猿です。ドラゴンは、鰐。口から火を噴くというより、魚でも吐き出しそう。恐ろしいマンチコアというのはライオン。ライオンとしては何の不足もない、立派なライオンだわ。でも他のものたちよりよりいっそう怪物じみているなんてところは全くない。

 ユニコーンはマミー・フォルチュナの魔法を見破り、幻影の背後にある正体を言い当てる。“他の者達よりいっそうmonstrousであるということは全くない。”彼女がこう言う時の“monster”という言葉は、一般の生き物達とは異なる、神話、伝説上の生き物、すなわち“本物”の存在を指す。“old”という言葉だけでなく、“fable”、“legend”等の言葉と並んで、“monster”という言葉もこの作品世界中では、永遠の“本物性”を意識した独特の意味の変容を担わされているのである。

用語メモ
 モンスター:“怪物”と訳されることの多いこの言葉だが、“極悪非道の人非人”という意味でもしばしば用いられることがある。しかしここでは、むしろ人間の保有する属性や能力を超越した、永遠の存在である神話上の神的存在を暗示する言葉として、ユニコーンによって“モンスター”という言葉が使用されている。人間的尺度から外れた概念を当てはめて言葉を用いるユニコーン自身の、“永遠性”という属性が反転的に語られていることを理解すべきであろう。

和洋女子大学英文学科
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作家島田雅彦氏による講演・パフォーマンス <自由人の祈り>

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(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)



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