Archive for 22 November 2004

22 November

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 53


So there was a manticore--famine-eyed, slobber-mouthed, roaring, curving his deadly tail over his back until the poison spine lolled and nodded just above his ear--and there was a lion too, tiny and absurd by comparison.

そんな風にして、そこにはマンチコアが、血走った目をして、口からはよだれを垂らし、自分の耳許で毒針が揺れるまで恐ろしい尻尾を背中の上に反り返らせて、その姿を現していました。でも本来のライオンの姿も同様に見ることができました。マンチコアの姿と比べてみると矮小でみっともないものでした。

魔法の力で与えられた幻影が存在感豊かであるのに対して、ユニコーンの目にははっきりと見える実体は、取るに足らない、愚かし気なものでしかない。主観と想像の裡にあるものと比して、実際にこの世界に現存するものは、どこかみすぼらしい、興醒めな部分を必ず持っている。それが現実存在の限界である。キーワード“reality”と関連する。

用語メモ
 幻想(fantasy)と現実(reality):現実存在が幻想よりもより迫真力を持ち、印象的であるということはない。強く心を動かし強烈な記憶を焼きつけるのは、あるがままの現実ではなく、個人の主観の裡に形成された幻想の方である。あるがままの世界には意味も目的も本来備わっていないので、目的意識に従って構築された「主観により歪められた認識」である幻想の中にしか、意味性も運命性も存在しない。

和洋女子大学英文学科
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作家島田雅彦氏による講演・パフォーマンス <自由人の祈り>

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(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"、『ピーター・パン』に関する論文「メタフィクションとフェアリー・ダスト」、「ネヴァランド--喪われた宗教」、「メイク・ビリーブの両義性とコンヴェンション」等を公開中)



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