Archive for 28 November 2004

28 November

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 59


"Her shabby skill lies in disguise. And even that knack would be beyond her, if it weren't for the eagerness of those gulls, those marks, to believe whatever comes easiest."
「あの魔女のいかさまの魔法の技なんて、見せ掛けに頼っているだけです。そしてその見せ掛けを操る技術さえも、たやすく信じられるものになら何でも飛びついてしまうこのカモ共の愚かな心がなければ、成り立たないものなんです。」

 魔女の用いた魔法の技を貶して、魔法使いは語る。魔女の魔法の技術だけでは、あのような幻影を見せることに成功することはできない。魔法は、かける側とかけられる側との間の相互の関係性の上に成り立つ、双方向的(interactive)なものであるとされているらしい。彼の口ぶりでは、あやかしの魔法にかかってしまう者たちが愚かだから、と言いたそうだが、魔法の発現をこのような相互作用の結果として捉えるのは、実は世界全体の一体性を前提とする、究極の魔法の原理なのである。

用語メモ
相互作用:世界全体の不可分な有機的関係を意識した場合には、行為を行うものとその行為を受けるものの、主客の関係さえもありえないことになる。主体とされるものの一方的な働きかけのみで事象が成立するということはない。常に行為を受ける客体の存在があって始めて、行為を及ぼすという事実が成立しているのである。事象とは行為の結果及ぼされた事態としてではなく、ひとつの連続体の部分の関係性として捉えられるべきものなのである。


和洋女子大学英文学科
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詳細
http://www.wayo.ac.jp/topics/boshuu.html
作家島田雅彦氏による講演・パフォーマンス <自由人の祈り>

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(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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