Archive for 01 December 2004

01 December

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 62


The unicorn said quietly. "This one is real. This is the harpy Celaeno."

ユニコーンは静かに言いました。「これは本物です。これはハーピーのセラエノです。」

 キーワード “real”に関連する。現実(reality)にあるものが偽物の存在であるのに対して、想像上の存在や架空の存在はreal(本物)であるとされる。本物が必ずしも善良である訳ではない。純粋な邪悪さを体現したものであるから「本物」であるとされているのである。現象的リアリズムにおいては純然たる高貴さも、究極の悪徳も存在しえないことを知ってしまった意識は、観念の内部においてのみ存在し得る本物の“美”、“悪”あるいは“邪悪さ”等の抽象概念を描くための枠組みとして、ファンタシーという形式に訴えることとなる。

用語メモ
 ハーピー:ギリシア神話に登場するハーピーはブロンズ製の鳥の身体に人間の女の顔を備えた怪物であるが、4人の姉妹しか存在しない。セラエノはその中の一人の名前である。神話の世界の生き物には、雄だけ、あるいは雌だけ、一代限りの先祖や子孫を持たないもの、あるいは単独で一つの種をなしているもの、等が当たり前に存在する。

和洋女子大学英文学科
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詳細
http://www.wayo.ac.jp/topics/boshuu.html
作家島田雅彦氏による講演・パフォーマンス <自由人の祈り>

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(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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