Archive for 12 December 2004

12 December

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 73


"It's a rare man who is taken for what he truly is," he said.

「本当の自分の姿を正しく見て取ってもらえる人なんて、極めて稀なのです。」魔法使いは言いました。

真実の存在であるユニコーンを前にして、男は何かを告げたそうな様子である。 ユニコーンの姿を目にしてもそれがユニコーンであると認識することが出来ない人々に驚きを覚えているユニコーンに、“本当の自分を正しく理解してもらえるのは稀なことだ。”と彼が語る言葉の裏には、この魔法使い自身の存在の秘密と関わりを持つ事実が隠されている。そして彼の担った運命は、ユニコーン自身の経験することになる出来事と不思議な照応関係を構築していることが後になって判明する。

用語メモ
 自己同一性(identity):自分という存在が何であるか、ということに対する確かな自覚が“自己同一性”であると言われている。しかし周囲を取り巻く環境との関わりや社会体制の中での自分の位置を確認することだけでは、極限的な懐疑を納得させる本来の自分の姿を見つけ出すことはできない。世界そのものの存立機構と自分自身の存在理由を結び付ける統合的な関係性を発見することができた時、本来のアイデンティティの回復が実現され、それが周知のものとして認められる世界が実際にあり得て初めて、“本当の自分の姿”が保障されることとなる。


和洋女子大学英文学科
「ポエトリー・リーディングの一日」のご案内
詳細
http://www.wayo.ac.jp/topics/boshuu.html
作家島田雅彦氏による講演・パフォーマンス <自由人の祈り>

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(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)

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