Archive for 13 December 2004

13 December

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 74


"We are not always what we seem, and hardly ever what we dream."

「私達はいつも見かけ通りのものであるとは限らない。そして私達の望む通りのものであることも滅多にない。」

 魔法使いSchmendrickの現実世界に対する不満であり、現実を超えた永遠の真実に対する渇望でもある。この言葉に示されている不完全な、高邁な理想を宿す精神を錯覚と盲目性の知覚で包み込む悪意ある自然としての現実認識は、「魔法」という主題と重要な関連を持つものである。

用語メモ
 永遠(eternal):心の中の理想として、全ての条件においてあるべき姿をした完全なものが“永遠性”という言葉で呼ばれていた。人間のような現象的存在にも、ある種の秘跡を通して永遠性を捕捉し得る、という仮説がロマン主義という思想の前提とするところであった。『最後のユニコーン』では、ユニコーンという存在を導入することにより、物質主義の帝国アメリカでは忘れ去られてしまった、かつての西欧文化が持っていた永遠に対する憧憬を復活させようとする試みが行われている。



和洋女子大学英文学科
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詳細
http://www.wayo.ac.jp/topics/boshuu.html
作家島田雅彦氏による講演・パフォーマンス <自由人の祈り>

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(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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