Archive for 16 December 2004

16 December

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 77


"Here is there, and high is low;
All may be undone.
What is true, no two men know--
What is gone is gone."

此処は彼処、高いは低い。
総てのものは損なわれる。
本当のことは誰も知らない。
失われたものは失われたまま。

 「時」の具現化した姿“エリ”を演じてマミー・フォルチュナが歌う歌である。時はあらゆるものを支配していかなる保障も確証も与えてくれようとしない、残酷なあるがままの自然そのものである。“どの二人の人も真実であることを知ることはない。”とは、真実は人それぞればらばらでしかない、つまり普遍的な真実などというものは存在しないということを意味する。現実が現実であることの限界と絶望を歌った言葉に相違ない。神に選ばれた存在として意義ある生を送っている筈だ、と自分と世界の関係を理解していたキリスト教世界の人々は、近代に至ってその確信が揺らいだ時このような感想を抱いたのであった。

用語メモ
 キーワード "time"と"eternal":時間に束縛されて本当の真実とは無縁の存在である人間(mortal)に対して、時の支配を受けることのない神々(immortal)は、普遍的に受け入れられることが可能な究極の真実を把握することのできる、本物の存在である。「永遠」とは単に限りなく長い時のことではない。「永遠性」という言葉に託された、絶対の真実に対する憧憬の念を理解する必要があるだろう。

和洋女子大学英文学科
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 10:00~11:00
2 ポエトリー・リーディング・コンテスト
 11:00~12:30
3 授賞式&オナー・リーディング
13:30~13:45
4 講演会&パフォーマンス
<自由人の祈り> 島田 雅彦 氏

メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)



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