Archive for 20 December 2004

20 December

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 81


"But to take me for a mountebank like herself--that was her first and fatal folly. For I too am real. I am Schmendrick the Magician, the last of the red-hot swamis, and I am older than I look."

「けれども僕のことを彼女と同じようないかさま魔法使いだと思ったのは、あの魔女の犯した最初の、そして致命的な失敗でした。何故なら僕もまた本物だからです。僕は魔法使いシュメンドリック、激烈な導師の力を備えた最後の者です。そして僕は見かけよりは実は年をとっているのです。」
 mountebank:サーカスの芸人、前出の“juggler”に等しい。ここではいかさまの魔法使いを指す。
 swami:導師。東洋的な神秘的な能力を秘めた修行者を思わせる言葉である。

 ユニコーンに自分の名を名乗る魔法使いは、彼もまたユニコーンやハーピーのように本物(real)で、本当はオールドなのだと語る。この物語における“real”という言葉と“old”という言葉の独特な意味の変容を裏付ける場面である。彼のこの言葉はこの物語の全体像を俯瞰する伏線となっている。

用語メモ
 キーワード“old”:ユニコーンやハーピーのような神話的な存在の持つ独特の属性が“old”という言葉で語られる一方、日常的な“年をとっている”という意味とも重ねあわせて用いられている。流動的に意味の変容を行う微妙な言葉の意味性を計算して語られた台詞である。

メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)



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