Archive for 23 December 2004

23 December

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 84


"I'm sorry," Schmendrick said, somewhere in the dark. "I would have liked it to be that spell that freed you."

「申し訳ありません。」どこか暗がりの中でシュメンドリックの声がしました。「あなたを助け出すのは、この魔法にしたかったのですが。」

 シュメンドリックは現代の効率主義とは異なり、同様の結果をもたらすものであるにせよ、その過程にはより相応しい流儀が選ばれるべきであると考えている。これは様式と根本原理を仲介する有機的連関の存在を強く意識する思想的態度を反映している。シュメンドリックは魔法の技が未熟であるのとは裏腹に、芸術家的趣味と批評家的判断力は実は超一流のものを持っている。

用語メモ
 賢さ(cleverness)と聡明さ(wisdom):ロマン主義哲学において、近代西洋の思想的空隙を補充する重要な要素として考えられたのが、東洋思想において重視される世界の根底にあるシステム的構造性そのものの理解であった。全一性と有機的関係性に対する確かな把握が“wisdom”という言葉で呼ばれるものの本質であろう。

メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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