Archive for 28 December 2004

28 December

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 89


"Unicorns know nought of need, or shame, or doubt, or debt--but mortals, as you may have noticed, take what they can get. "

ユニコーンはせざるを得ないこともなければ、屈辱を感じたり、迷ったり、負い目を感じたりすることもありません。でも人間というものは、今ごらんになったように、手に入るものを利用する他無いのです。

 望む通りの魔法の技を行使してユニコーンを救い出すことができないことが分かり、盗んだ鍵を用いて檻の扉を開けようとする時の、シュメンドリックの言い訳の言葉である。彼の語る通り、我々時間的存在である人間にとっては当然の、現実的制約から全く自由な空間に生きているのがユニコーン達永遠の存在である。しかし我々は決して時間的制約のもとに生きていることに満足している訳ではない。厳然たるあるがままの自然に対して、本来のあるべき姿からの乖離をどうしようもなく感じてしまうのが人間の定めなのである。

用語メモ
 キーワード“choice”:人間達のように時間性の束縛を受けて存在するものにとっては、“選択”とは選び取った選択肢以外の可能性の全てを放棄することに他ならない。常に究極のあるべき姿から離反し続けることしかできない自分自身の姿を苦々しく見つめる思いがこの魔法使いの心を占めている。


メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


00:00:00 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks