Archive for March 2005

31 March

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 182


"When those words were first spoken," Drinn said, "Haggard had not been long in the country, and all of it was still soft and blooming--all but the town of Hagsgate. Hagsgate was then as this land has become: a scrabbly, bare place where men put great stones on the roofs of their huts to keep them from blowing away."

「最初にこの呪いの言葉が語られたのは」、ドリンは言った。「ハガード王がこの地に来てまだ間がない頃でした。そして国中が花の咲き乱れる優しい大地におおわれていたのです。ハグズゲイトの町のみを除いては。そのころのハグスゲイトは、この国が今なってしまったような状態だったのです。みすぼらしい、草も生えない土地で、人々は風に飛ばされないように、小屋の屋根の上に大きな石を乗せていました。」

 ハガードの王国という全体に対して、課せられた運命の逆転したハグズゲイトという町がある。総体とその部分の関係において対極的分離が生成し、国土を治めるべき王が王国全体と見事に離反しているのが、ハガードの王国なのである。

用語メモ
 極性(polarity):経験則によって存在が確認されている、いくつかの世界の構成原理のうちの一つであろう。他のいかなる目的のためにこの法則性が存在するのかは定かではないが、この機構そのものが世界を生み出した原動力であろうことは既に、是認された事実となっている。


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30 March

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 181


You whom Haggard holds in thrall,
Share his feast and share his fall.
You shall see your fortune flower
Till the torrent takes the tower.
Yet none but one of Hagsgate town
May bring the castle swirling down.

お前達、ハガード王の奴隷となっているものは、
 彼の繁栄と没落を共にするであろう。
お前達は幸運が花開くのを目にするであろう、
 奔流が城を呑み込むまでは。
けれども城の破滅をもたらすものは、
 このハグズゲイトの町のものをおいて他にはない。

 魔女がハガード王の城とハグズゲイトの町にかけたという呪いの言葉である。
 ハグズゲイトの町はハガード王と繁栄を共にするとは言いながら、将来ハグズゲイトの町に生まれる者が、ハガード王の破滅と、そしてそれに従ってハグズゲイトの町自身の没落をももたらすと言うのである。

用語メモ
 呪い(curse):呪いは単に不幸と災厄を招くばかりではない。執拗な悪意でもってこの世の不条理を浮き彫りにし、離脱不能な罠の形で巧妙なディレムマを招来し、芸術的な謎をも完成する、優れて詩的な行為なのである。


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29 March

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 180


Drinn said carefully, "We never see the Bull, and we never speak of him. Nothing that concerns him can be any business of ours. As for unicorns, there are none. There never were."

ドリンは注意深く答えました。「町の者は牡牛の姿を目にすることはありません。牡牛のことを話題にすることもありません。牡牛に関わることなど、我々には全く関わり合いの無いことです。ユニコーンはと言えば、そんなものは存在しません。存在したこともありません。」

 牡牛とユニコーンのことを知っているか、と尋ねたモリーに答えるドリンの言葉である。ユニコーンをどのように捉えているかによって、人間性が分かる。第1章に登場した狩人達、あるいは農夫等と比較せよ。

用語メモ
 "There never were.":「ユニコーンなんて、もともといなかったのです。」ユニコーンが普遍原理を示すとするならば、「この宇宙はもともと意味も目的も備えることなくただ存在するだけのもの」、と見なす見解がここに表されている。


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28 March

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 179


"Haggard paid her no money," he went on, "and Hagsgate, alas, paid her no heed. She was treated politely and referred to the proper authorities, whereupon she flew into a fury and screamed that in our eagerness to make no enemies at all, we had now made two."

「ハガードは城を建築した代償を魔女には支払いませんでした。」ドリンは続けた。「そしてハグズゲイトも、やはり魔女の苦情を一顧だにしませんでした。彼女は丁寧に応待を受け、“適切な担当部署”へと回されたのです。そこで魔女は癇癪を爆発させて、町の人々は敵を作るのを避けようとして、二人の敵を作ってしまうことになったのだ、と叫んだのです。」

 ハガード王の城とハグズゲイトの町の運命にかかわる呪いと、それに付随した予言が明らかにされようとする場面である。

用語メモ
 referred to the proper authorities:“余所の管轄部署に照会された”、つまり窓口をたらい回しにされたのである。現代生活に見られる典型的なお役所の対応ぶりが語られているのは、一種のアナクロニズムを形成しており、キーワード、アンチ・ファンタシーと繋がる部分になっている。


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27 March

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 178


The room was suddenly very still, and in the beery light the faces of the townsfolk looked as tight and pale as cheese.

部屋中の人々が突然黙り込みました。そしてビールのような灯りの下で町の人々の顔はチーズのように黄色くこわばっていました。

 一瞬の雰囲気の変化を捉えた、印象的な描写である。食物を持ち出して語ったおどけた表現は、現実とは全く異なるファンタシーの空間において独特の詩的効果を発揮することになる。

用語メモ
 beery light:ビール(beer)の形容詞形が“beery”である。宿屋の照明の雰囲気を形容する言葉として、強引にビールの色を持ち出している。日常的には用いられない用例の形容詞形をいわば造語的に奔放に利用して、独特の印象を形成するという詩的技巧である。

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