Archive for 13 January 2005

13 January

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 105


"No," she replied. "I cannot turn you into something you are not, no more than the witch could. I cannot turn you into a true magician.
"I didn't think so," Schmendrick said. "It's all right. Don't worry about it."
"I'm not worrying about it," the unicorn said.

「いいえ。」ユニコーンは答えました。「私にはあなたを別物の何かに変えてあげることなど、できません。それはあの魔女の場合と同じです。私はあなたを本物の魔法使いにしてあげることはできません。」
「あなたならば、と期待していたのですが。でもいいんです。気にしないで下さい。」
「私は何も気にしてなんかいません。」ユニコーンは答えました。

 なぜかシュメンドリックの“本物の魔法使いになりたい”という満たされない願望のことを知っているユニコーンは、彼の望みを叶えてやることができないことを告げる。「気にしないで下さい。」というシュメンドリックの言葉に対して、「気にしてなんかいません。」と答えるのは、あまりにも人の気持ちを理解しない、冷たい応答のように感じられるが、実は無意味な躊躇や遠慮等の歪んだ人間的感覚を理解しない、ユニコーン独特の永遠性の属性を示す場面なのである。

用語メモ
 人間的感覚: “worry”とは「心配する」、「気に病む」に相当する言葉だが、このような感覚を一切持ち得ないということが、ユニコーンの存在属性に対する定義の一つとなる。“regret”や“sorrow”と並んで、「永遠性」を新たに理解するための新たな条件が提示されているのである。


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(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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