Archive for 20 January 2005

20 January

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 112


Instantly, his black hat snatched itself from the fingers of the man who held it and floated slowly through the darkening air, silent as an owl.

すぐさま彼の黒い帽子は持っていた男の指から身を振りほどいて、夜の暗がりの深まる中で、梟のように静かに宙を飛んでいきました。

 シュメンドリックがかけた魔法の力を受けて、帽子が宙を漂っていく場面である。James Thurberの"The White Deer"に描かれた一場面との類似が、Brian Atteberyによって指摘されている。"Fantasy Tradition in American Literature"においてAtteberyの指摘する通り、『最後のユニコーン』には"The White Deer"に直接の影響を受けた部分がいくつかある。しかし『最後のユニコーン』が、"The White Deer"とは全く異なる創作理念のもとに構築された独自の文学作品であることもまた確かな事実である。

用語メモ
 パロディ:『最後のユニコーン』においては他の様々の文学作品が導入されているが、その模倣行為はこれらを揶揄して風刺する目的のために行われている訳ではない。言及と参照はむしろ、現実世界の拘束から自由な独特のファンタシー空間の次元軸を拡張することのために効果的に活用されている。

メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)



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