Archive for 21 January 2005

21 January

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 113


But now and then after that, they laughed with wonder in the middle of very serious events, and so came to be considered frivolous sorts.

しかしその後は、彼等は時折深刻な場面の最中にさえも、いかにも可笑しそうに笑い出してしまうことがあり、軽薄な人間だと周囲に見なされてしまうこととなったのでした。

 ユニコーンの間近に来てしまったおかげで、彼女の体現する“eternal”な真実に触れてしまった二人の男は、その後人間の世界を支配する常識から逸脱することを余儀なくされてしまう。彼等には満足と失望、喜びと悲しみ、真面目、不真面目を分別する社会的な判断基準の転倒がもたらされてしまっているのである。
 この部分こそ、主題的に本作品の微妙な存在特性を考察するために設定したキーワード“antifantasy”にもっとも直裁に関連するものと思われる。ここに描かれたような、東洋思想においてむしろ顕著な老子的な風狂の様態の発現は、この作品世界の基調をなす重要なシステム原理として用いられているように思われる。

用語メモ
 風狂:「狂人の体を装うこと」が“風狂”の表面的な字義となるが、正気に対して狂気の意義を主張する感覚は、革新的な宇宙論を自覚した特有のシステム理論の一形態として理解するべきものだろう。



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(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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