Archive for 26 January 2005

26 January

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 118


The giant swore till even the horses fidgeted with embarrassment.

大男はひどく汚い言葉で怒鳴り散らしたので、馬さえもが恥ずかしがってもじもじしました。

 リアリスティックな描写と人間中心の世界観から成り立つと言われる、日常性と社会性を重視した“ノベル”(小説)の常道とは明らかに異なり、この物語においては諧謔的な情景を描写する際のおどけた表現や、言い回しを工夫した語りの面白味そのものが作品世界の中心的骨格を成している。語られた言葉によって構築される独特の観念世界である古典的な“物語”の復権が、ファンタシーの枠組みの中で巧みに行われているのがこの作品である。

用語メモ
 語り、説話(narrative):“小説”という訳語を当てはめられた“novel”は、厳密に言えばファンタシーとは相容れない内容を備えた、特有のジャンルを指す言葉である。現在の我々がファンタシーと呼んでいるものは、むしろノベルの誕生以前にかつてあったような説話、フランス語では“ロマン”と呼ばれるようなものに近い。


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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)“荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的言説ー『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求”を新規公開中)





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