Archive for 31 January 2005

31 January

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 123


"I am Schmendrick the Magician," he announced, swirling his cloak with both hands until it billowed feebly.

「私は魔法使いのシュメンドリックという者です。」高らかに名乗って、マントを風に翻そうと両手で広げたのですが、彼のマントはみすぼらしく棚引いただけでした。

 ここに描かれているような滑稽な場面が、この作品の中では繰り返し登場している。単なる悪ふざけ以上の、作品提示における主題に直截に関連する意味性をこのような記述方法の中に認めることが、『最後のユニコーン』をより深く読み解く鍵となるだろう。“諧謔性”に対する哲学的評価が改めて求められると思われる部分である。

用語メモ
 滑稽(the ridiculous):例えば、『最後のユニコーン』と思想的に近接した部分を多く持つと思われるEdgar Allan Poe の作品世界に対する評価が行われる時、恐怖やグロテスクな要素が着目されることはしばしばあったが、滑稽さの部分は見落とされがちであった。“滑稽さ”の要素が実は、ポーの意識していた思想体系においては、“恐怖”や“真面目”と反転的に連接するものであることを理解しておくことが重要であると思われる。


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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的言説―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」を新規公開中)


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