Archive for 05 January 2005

05 January

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 97

ユニコーン画像 

The magician crept as close to the unicorn's light as he dared, for beyond it moved hungry shadows, the shadows of the sounds that the harpy made as she destroyed the little there was to destroy of the Midnight Carnival.

魔法使いは出来る限りユニコーンの発する光の間近に来ようと身を寄せてきました。何故なら光の向こうには飢えた影がうごめいていたからです。それはハーピーがミッドナイト・カーニバルの残骸を残さず破壊し続ける、騒音の影なのでした。

 キーワード“poetic phrases”と関連する部分である。ここでは異質のものを連結することから斬新な効果を生み出す、詩的な表現技法が用いられている。“騒音の影”のように、しばしば音声を映像であるかのように、あるいは映像を音声であるかのように逆転させて語る技法は、アメリカの詩人Edgar Allan Poeにおいて顕著なテクニックであった。

用語メモ
 詩的表現とファンタシー:現実にはあり得ない、言語としても意味をなし得ない破綻した言説が、詩の世界においては独特の表現技巧として高く評価される。しかし、あり得ない世界のあり得ない出来事を記述するファンタシーの作品世界においては、単なる表現の枠組みを超えて、記述対象と記述手法自身の問題としてこのような“飛躍表現”が改めて主題的な評価の対象となり得るのである。


メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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