Archive for 07 January 2005

07 January

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 99


The unicorn waited, feeling the days of her life falling around her with the rain. “I can sorrow," she offered gently, “but it's not the same thing."

ユニコーンは雨とともに彼女の生の日々が周りに降り落ちていくのを感じながら、しばらく口をつぐみました。そして再びやさしく語りかけました。「私は悲哀を感じることはできます。けれどもそれは、後悔とは同じものではありません。」

 時間性の制約を受けた人間的な感情に支配されている魔法使いを目の当たりにして、ユニコーンは自由な永遠性の属性が侵されていくような気持ちを覚えるのであろう。この感覚は第1章に記述されていた "for the first time she began to feel the minutes crawling over her like worms."という語句と対応している。
 人間の感覚にあえて同調させるようにして彼女が語った言葉が、「彼女にも "sorrow"ならば理解できる。」というものであった。“sorrow”と“regret”の違いが明らかに対比されている。 “regret”は運命の奴隷として生きる時間性の存在が避けるべくもなく感じる後悔や慚愧の念であろう。“sorrow”は永遠の存在であり、生死を超越したユニコーンが、生きとし生けるものたち全てに対して覚える悲哀、あるいは慈しみの気持ちであろうか。

メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

(『最後のユニコーン』注釈テキスト "Annotated Last Unicorn"、論文「『最後のユニコーン』と“漫画性”」、「『最後のユニコーン』のフック的アンチ・ヒーローと神格化された無知」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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