Archive for October 2005

31 October

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 396


“How wise I was, and how sad for so long, and how proud I am now! My boy, my little boy!" He could not quite cry real tears, but his nose was running.

「私は何と賢明であったことだろう。そして長い間、なんと辛い思いをしたことだろう。だが、今はこれほど誇らかな気持ちはない。わが子よ。私の息子よ。」
こういいながらも彼は、本当の涙を流すことさえ出来ず、ただ鼻水を垂らしているのでした。

 涙を流すだけの率直な振る舞いも示すことが出来ない、ごまかしだけに生きて来たあさましい人間の姿が語られている。キーワード“reality”に関連する部分であろう。キャプテン・カリーと並んで、矮小な小悪党像としてはなはだ興味深い、見事な人物造形を勝ち得ているのが、このハグズゲイトの町の長であるドリンという人物である。

用語メモ
 run:“(鼻水が)流れる”の意を表す動詞である。涙を流すのであれば、もっと高貴で真性の感情がそこに語られることとなる。事物にも行動にも、自ずから高邁なものと卑俗なものがあるとするのが、ファンタシーの底流にある思想である。そこには総ての事物を統括するヒエラルキーの構造がある。

お願い
 “『最後のユニコーン』読解メモ”は、この後の第14章をもって終了となります。
 これまで解説されていた部分についての疑問、あるいは言及されていなかった箇所についての質問等がありましたら、どうかお知らせ下さい。総集編で補完したいと思います。その他リクエスト等ありましたらご遠慮なくお寄せ下さい。


メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中


大学祭英文学科公開授業のお知らせ

英文学科学園祭公開授業
The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
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 11月5日(土)、11月6日(日)の両日開催
 午後1時より3時まで

 東館11階 演習室3 にて

 アニメーション映画を上映しながら、テーマの解説を行います。


 The Last Unicorn―映画化の最新情報

 1982年のアニメーション版は日本では未公開だが、欧米では熱狂的ファンも多い。“アメリカ”の主題歌が今また話題になっている。
 2005年公開予定で製作進行中の実写版は、今世界中のホームページで注目を浴びている。


 11月5日、土曜日の内容
 1 ユニコーンとは―伝説に語り伝えられたユニコーン
 A ローマの博物学者プリニウスの「博物誌」の記述

Pliny describes the unicorn as being very ferocious, similar in the rest of its body to a horse, with the head of a deer, the feet of an elephant, the tail of a bear; a deep, bellowing voice, and a single black horn, two cubits in length
 プリニウスによれば、ユニコーンはとても獰猛で、身体そのものは馬と同様だが、頭は鹿のようで、足は象のようで、尾は熊のようで、唸る声はとても重々しく、2キュービットの長さの黒い角を持っているということだ。

 ユニコーンとは様々の動物の組み合わせ、“キメラ”(chimera)にも似た存在であった。

 B タペストリーに描かれたユニコーン

 クリュニー美術館所蔵のタペストリー―“貴婦人とユニコーン”
 メトロポリタン美術館所蔵のタペストリー“クロイスターズ・ユニコーン”
 タペストリーの中に描かれたユニコーンとは、中世的“アレゴリー”の寓諭的意味を背負っているものであった。

 C 聖書の記述―申命記とヨブ記に記載のある“reem”と呼ばれる動物

 ユニコーンと彼女の宿敵である牡牛との関係

 蝶の言葉

His firstling bull has majesty, and his horns are the horns of a wild ox. With them he shall push the peoples, all of them, to the ends of the earth.
--
You can find your people if you are brave. They passed down all the roads long ago, and the Red Bull ran close behind them and covered their footprints.


 11月6日、日曜日の内容
 『最後のユニコーン』のユニコーンは、従来の言い伝えとは全く異なる存在属性を与えられている。
 ユニコーンを語る独特の描写と比喩の用法

A
She was very old, though she did not know it, and she was no longer the careless color of sea foam, but rather the color of snow falling on a moonlit night.
彼女は、自分では知らなかったけれど、とても年とっていた。そして彼女はもう海の泡のような無邪気な白い色ではなく、月の照らす晩に降る雪のような白い色をしていた。

B
But her eyes were still clear and unwearied, and she still moved like a shadow on the sea.
けれどもユニコーンの目はまだ透き通っていて疲れを知らず、彼女は 海の上の影のように身体を運びました。

C
She did not look anything like a horned horse, as unicorns are often pictured, being smaller and cloven-hoofed, and possessing that oldest, wildest grace that horses have never had, that deer have only in a shy, thin imitation and goats in dancing mockery.
彼女はユニコーンがしばしば絵に描かれていたように、角のついた馬のような姿はしていなかった。体は馬よりも小さく、蹄は二つに割れていて、馬が決して所有したことのない、そして鹿はただ薄っぺらなおずおずとした物真似でしか所有したことがなく、そして山羊はおどけて踊るような形でしか持っていない“オールド”で“ワイルド”な優美さを備えていた。


アンチファンタシー研究プロジェクト

 書籍として出版された研究書・注釈書とインターネットで一般に公開中のテキスト、研究資料が連動している


『ピーターとウェンディ』と『最後のユニコーン』について考察した研究書:

 『アンチ・ファンタシーというファンタシー』

 “アンチ・ファンタシー”というキーワードからファンタシーの本質に迫る

キーワード別に主題を解説した注釈テキスト:

 Annotated Last Unicorn

 様々の文学作品や流行歌からの引用を解説
 テーマを解析するためのキーワード、“old”、“time”、“magic”など




インターネットで公開中の様々な関連データ
 ホームページ “Fantasy as Antifantasy”
 http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

 ブログ “Fantasy as Antifantasy Daily Lecture”
 ―The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ
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30 October

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 395


"You don't know me, my boy? No--how should you? How should I deserve to have you know me? I am your father--your poor old overjoyed father. I am the one who left you in the marketplace on that winter night long ago, and handed you over to your heroic destiny.

「わが子よ、私が分からないというのかい。いや、分かる筈などもない。この私に、あなたに分かってもらうだけの資格があるだろうか。私はあなたの父なのだよ。あなたの、哀れな喜びに震える父親なのだ。この私が、遠い昔のあの冬の夜、あなたを市場に残して、英雄としての運命に手渡したのだ。」

 ハグズゲイトの町にかけられた呪いをすかすためにリアを捨てたのが、自分であると告白する町長ドリンの言葉である。王となったリアに、この時になって始めて自分が父親であることを名乗り出ようとするのである。

用語メモ
 heroic destiny(英雄としての定め):hero(英雄)として人間の中で選ばれた存在という意味性と、destiny(運命)として時間と歴史の中で選ばれた行為を行うという意味性をリアに授けたのは、この矮小で劣悪な小市民の代名詞ともいうべきドリンという名の男なのであった。


お願い
 “『最後のユニコーン』読解メモ”は、この後の第14章をもって終了となります。
 これまで解説されていた部分についての疑問、あるいは言及されていなかった箇所についての質問等がありましたら、どうかお知らせ下さい。総集編で補完したいと思います。その他リクエスト等ありましたらご遠慮なくお寄せ下さい。


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 1982年のアニメーション版は日本では未公開だが、欧米では熱狂的ファンも多い。“アメリカ”の主題歌が今また話題になっている。
 2005年公開予定で製作進行中の実写版は、今世界中のホームページで注目を浴びている。


 11月5日、土曜日の内容
 1 ユニコーンとは―伝説に語り伝えられたユニコーン
 A ローマの博物学者プリニウスの「博物誌」の記述

Pliny describes the unicorn as being very ferocious, similar in the rest of its body to a horse, with the head of a deer, the feet of an elephant, the tail of a bear; a deep, bellowing voice, and a single black horn, two cubits in length
 プリニウスによれば、ユニコーンはとても獰猛で、身体そのものは馬と同様だが、頭は鹿のようで、足は象のようで、尾は熊のようで、唸る声はとても重々しく、2キュービットの長さの黒い角を持っているということだ。

 ユニコーンとは様々の動物の組み合わせ、“キメラ”(chimera)にも似た存在であった。

 B タペストリーに描かれたユニコーン

 クリュニー美術館所蔵のタペストリー―“貴婦人とユニコーン”
 メトロポリタン美術館所蔵のタペストリー“クロイスターズ・ユニコーン”
 タペストリーの中に描かれたユニコーンとは、中世的“アレゴリー”の寓諭的意味を背負っているものであった。

 C 聖書の記述―申命記とヨブ記に記載のある“reem”と呼ばれる動物

 ユニコーンと彼女の宿敵である牡牛との関係

 蝶の言葉

His firstling bull has majesty, and his horns are the horns of a wild ox. With them he shall push the peoples, all of them, to the ends of the earth.
--
You can find your people if you are brave. They passed down all the roads long ago, and the Red Bull ran close behind them and covered their footprints.


 11月6日、日曜日の内容
 『最後のユニコーン』のユニコーンは、従来の言い伝えとは全く異なる存在属性を与えられている。
 ユニコーンを語る独特の描写と比喩の用法

A
She was very old, though she did not know it, and she was no longer the careless color of sea foam, but rather the color of snow falling on a moonlit night.
彼女は、自分では知らなかったけれど、とても年とっていた。そして彼女はもう海の泡のような無邪気な白い色ではなく、月の照らす晩に降る雪のような白い色をしていた。

B
But her eyes were still clear and unwearied, and she still moved like a shadow on the sea.
けれどもユニコーンの目はまだ透き通っていて疲れを知らず、彼女は 海の上の影のように身体を運びました。

C
She did not look anything like a horned horse, as unicorns are often pictured, being smaller and cloven-hoofed, and possessing that oldest, wildest grace that horses have never had, that deer have only in a shy, thin imitation and goats in dancing mockery.
彼女はユニコーンがしばしば絵に描かれていたように、角のついた馬のような姿はしていなかった。体は馬よりも小さく、蹄は二つに割れていて、馬が決して所有したことのない、そして鹿はただ薄っぺらなおずおずとした物真似でしか所有したことがなく、そして山羊はおどけて踊るような形でしか持っていない“オールド”で“ワイルド”な優美さを備えていた。


アンチファンタシー研究プロジェクト

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『ピーターとウェンディ』と『最後のユニコーン』について考察した研究書:

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29 October

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 394


"It was an earthquake," one man murmured dreamily, but another contradicted him, saying, "It was a storm, a nor'easter straight off the sea. It shook the town to bits, and hail came down like hoofs." Still another man insisted that a mighty tide had washed over Hagsgate; a tide as white as dogwood and heavy as marble, that drowned none and smashed everything.

「あれは地震だった。」一人の男が夢の中のようにつぶやきました。けれども別の男が打ち消して言いました。「あれは嵐だった。海から吹き付けてくる、北東風だった。風が町中をばらばらにして、馬の足音のように霰が吹き付けたんだ。」さらに別の男が、巨大な津波がハグスゲイトの町を襲ったのだと主張しました。ハナミズキのように白く、大理石のように重い波が押し寄せて、誰も溺れさせることなく、全てのものを打ち壊したのだと言うのでした。

 解放されたユニコーン達が通り過ぎた際のことを証言する、ハグズゲイトの町の人々の言葉である。魔法や真実に関わることは、現象世界においては歪んだ形で把握され、その本質事体は決して理解し得ない。現象世界において具現する事象は、様々な要素の重ね合わせの一時的な発現形の一つに過ぎない。その要素の各々を感知する者の主観に従って、様々のそれぞれ矛盾した偽りの“真実”がある。
 Cf. Daily Lecture379

用語メモ:
 northeaster:北東風。冷たい強風につけられた固有の名称である。一般的な“風”と客観的な“方向”によって折々の風が意味なく名付けられ、記述されるのではなく、地方と季節に特有の各々の独特の性質を有する、神のごとき性情と特質を備えた幾多もの個別の“風”が存在するのである。


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 11月5日、土曜日の内容
 1 ユニコーンとは―伝説に語り伝えられたユニコーン
 A ローマの博物学者プリニウスの「博物誌」の記述

Pliny describes the unicorn as being very ferocious, similar in the rest of its body to a horse, with the head of a deer, the feet of an elephant, the tail of a bear; a deep, bellowing voice, and a single black horn, two cubits in length
 プリニウスによれば、ユニコーンはとても獰猛で、身体そのものは馬と同様だが、頭は鹿のようで、足は象のようで、尾は熊のようで、唸る声はとても重々しく、2キュービットの長さの黒い角を持っているということだ。

 ユニコーンとは様々の動物の組み合わせ、“キメラ”(chimera)にも似た存在であった。

 B タペストリーに描かれたユニコーン

 クリュニー美術館所蔵のタペストリー―“貴婦人とユニコーン”
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 タペストリーの中に描かれたユニコーンとは、中世的“アレゴリー”の寓諭的意味を背負っているものであった。

 C 聖書の記述―申命記とヨブ記に記載のある“reem”と呼ばれる動物

 ユニコーンと彼女の宿敵である牡牛との関係

 蝶の言葉

His firstling bull has majesty, and his horns are the horns of a wild ox. With them he shall push the peoples, all of them, to the ends of the earth.
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 11月6日、日曜日の内容
 『最後のユニコーン』のユニコーンは、従来の言い伝えとは全く異なる存在属性を与えられている。
 ユニコーンを語る独特の描写と比喩の用法

A
She was very old, though she did not know it, and she was no longer the careless color of sea foam, but rather the color of snow falling on a moonlit night.
彼女は、自分では知らなかったけれど、とても年とっていた。そして彼女はもう海の泡のような無邪気な白い色ではなく、月の照らす晩に降る雪のような白い色をしていた。

B
But her eyes were still clear and unwearied, and she still moved like a shadow on the sea.
けれどもユニコーンの目はまだ透き通っていて疲れを知らず、彼女は 海の上の影のように身体を運びました。

C
She did not look anything like a horned horse, as unicorns are often pictured, being smaller and cloven-hoofed, and possessing that oldest, wildest grace that horses have never had, that deer have only in a shy, thin imitation and goats in dancing mockery.
彼女はユニコーンがしばしば絵に描かれていたように、角のついた馬のような姿はしていなかった。体は馬よりも小さく、蹄は二つに割れていて、馬が決して所有したことのない、そして鹿はただ薄っぺらなおずおずとした物真似でしか所有したことがなく、そして山羊はおどけて踊るような形でしか持っていない“オールド”で“ワイルド”な優美さを備えていた。


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28 October

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 393


The people of Hagsgate sat on their doorsteps wherever they could find them, considering the wreckage. They had always had the air of paupers, even in the midst of plenty, and real ruin made them appear almost relieved, and no whit poorer.

ハグズゲイトの町の人々は、自分の家の戸口を見つけ出すことが出来た者はみな、そこに座り込み、破壊の大きさを見定めていました。彼等はいつも豊かさの直中にも貧民の容貌を漂わせていましたが、紛れも無い破滅は、むしろ彼等から心配の種を除いてやったらしく、いささかも彼等の貧しさを増している訳ではありませんでした。

 破滅、絶望、喪失等、極限に至った不幸は、むしろ反転して煩悩からの解放と、そして至福の快楽とさえ繋がり得るのかもしれない。いずれにせよハグズゲイトの町とハガードの王国に対して、運命の振幅の転換期がおとずれたのである。


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 1982年のアニメーション版は日本では未公開だが、欧米では熱狂的ファンも多い。“アメリカ”の主題歌が今また話題になっている。
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 11月5日、土曜日の内容
 1 ユニコーンとは―伝説に語り伝えられたユニコーン
 A ローマの博物学者プリニウスの「博物誌」の記述

Pliny describes the unicorn as being very ferocious, similar in the rest of its body to a horse, with the head of a deer, the feet of an elephant, the tail of a bear; a deep, bellowing voice, and a single black horn, two cubits in length
 プリニウスによれば、ユニコーンはとても獰猛で、身体そのものは馬と同様だが、頭は鹿のようで、足は象のようで、尾は熊のようで、唸る声はとても重々しく、2キュービットの長さの黒い角を持っているということだ。

 ユニコーンとは様々の動物の組み合わせ、“キメラ”(chimera)にも似た存在であった。

 B タペストリーに描かれたユニコーン

 クリュニー美術館所蔵のタペストリー―“貴婦人とユニコーン”
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 C 聖書の記述―申命記とヨブ記に記載のある“reem”と呼ばれる動物

 ユニコーンと彼女の宿敵である牡牛との関係

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His firstling bull has majesty, and his horns are the horns of a wild ox. With them he shall push the peoples, all of them, to the ends of the earth.
--
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 『最後のユニコーン』のユニコーンは、従来の言い伝えとは全く異なる存在属性を与えられている。
 ユニコーンを語る独特の描写と比喩の用法

A
She was very old, though she did not know it, and she was no longer the careless color of sea foam, but rather the color of snow falling on a moonlit night.
彼女は、自分では知らなかったけれど、とても年とっていた。そして彼女はもう海の泡のような無邪気な白い色ではなく、月の照らす晩に降る雪のような白い色をしていた。

B
But her eyes were still clear and unwearied, and she still moved like a shadow on the sea.
けれどもユニコーンの目はまだ透き通っていて疲れを知らず、彼女は 海の上の影のように身体を運びました。

C
She did not look anything like a horned horse, as unicorns are often pictured, being smaller and cloven-hoofed, and possessing that oldest, wildest grace that horses have never had, that deer have only in a shy, thin imitation and goats in dancing mockery.
彼女はユニコーンがしばしば絵に描かれていたように、角のついた馬のような姿はしていなかった。体は馬よりも小さく、蹄は二つに割れていて、馬が決して所有したことのない、そして鹿はただ薄っぺらなおずおずとした物真似でしか所有したことがなく、そして山羊はおどけて踊るような形でしか持っていない“オールド”で“ワイルド”な優美さを備えていた。


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27 October

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 392


Every house in Hagsgate was down; everything that could be broken was. The town looked as though it had been stepped on.

ハグズゲイトの町のどの家も、みんな倒されていました。壊すことのできるものは総て、壊されていました。町はあたかも足で踏み付けられたあとのようでした。

 ユニコーンがこの呪われた町を通り過ぎた結果もたらされたことが、あたかもレッド・ブルによる破壊と蹂躙と同一の出来事であるかのように記されているのが興味深い。ユニコーンの解放によるハガードの王国の国土の豊かさの回復と、呪いの成就によってもたらされたハグズゲイトの町の繁栄の終止は、切り離すことの出来ない密接な対応を示し、それはユニコーンの顕現とレッド・ブルの消失という両者の間の関係性にあらわれたものと全く同一の事象の裏面としても理解され得るものなのである。

用語メモ
 クロスチャンネル解釈:量子の振舞いの観測において、ハドロンの生成と消滅が、時間軸を反転させて模式図を読み取ることにより、物質と反物質の生成と消滅という関係性をそれぞれ反転した事象として解釈することもまた可能なことが知られている。


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 プリニウスによれば、ユニコーンはとても獰猛で、身体そのものは馬と同様だが、頭は鹿のようで、足は象のようで、尾は熊のようで、唸る声はとても重々しく、2キュービットの長さの黒い角を持っているということだ。

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 B タペストリーに描かれたユニコーン

 クリュニー美術館所蔵のタペストリー―“貴婦人とユニコーン”
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A
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彼女は、自分では知らなかったけれど、とても年とっていた。そして彼女はもう海の泡のような無邪気な白い色ではなく、月の照らす晩に降る雪のような白い色をしていた。

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She did not look anything like a horned horse, as unicorns are often pictured, being smaller and cloven-hoofed, and possessing that oldest, wildest grace that horses have never had, that deer have only in a shy, thin imitation and goats in dancing mockery.
彼女はユニコーンがしばしば絵に描かれていたように、角のついた馬のような姿はしていなかった。体は馬よりも小さく、蹄は二つに割れていて、馬が決して所有したことのない、そして鹿はただ薄っぺらなおずおずとした物真似でしか所有したことがなく、そして山羊はおどけて踊るような形でしか持っていない“オールド”で“ワイルド”な優美さを備えていた。


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