Archive for 19 October 2005

19 October

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 384


"I have no wish to capture her, but only to spend my life following after her--miles, leagues, even years behind--never seeing her, perhaps, but content. It is my right. A hero is entitled to his happy ending, when it comes at last."

私はユニコーンを捕まえて手に入れようなどという望みは抱いていない。ただ一生を彼女の後を追って過ごして行きたいだけだ。何マイルも何リーグも離れて、何年も引き離されて、おそらく二度とあの方の姿を目にすることもないだろう。でも、それでよいのだ。それが私に与えられた権利だ。英雄というものは、最後にハッピー・エンドが訪れる際には、これを享受する権利を持っている。

 キーワード“story”と関連する。作中人物が仮構物としての物語の中に自身が存在していることを明確に自覚している。世界の中で自分の果たすべき役割が定まっており、役柄に応じたふさわしい運命が確実に与えられているという点において、お話(story)は現実よりもより真実に近いものであると言えるだろう。この視点を加えることにより、“story”というキーワードは反転的にキーワード“reality”と関連することとなる。

用語メモ
 悲劇(tragedy):決して叶えられぬ願望を一生追い求める者、という人物を演じることにより、自分を中心にして彼を包含する仮構世界そのものが、その悲劇を演出する媒体としての特有の存在価値を得ることとなる。“悲劇”となることによって世界が一つの意味性のもとに収束し、完結するのである。“悲劇”の真の存在意義である。


お願い
 “『最後のユニコーン』読解メモ”は、この後の第14章をもって終了となります。
 これまで解説されていた部分についての疑問、あるいは言及されていなかった箇所についての質問等がありましたら、どうかお知らせ下さい。総集編で補完したいと思います。その他リクエスト等ありましたらご遠慮なくお寄せ下さい。


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論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(14)“意味消失による意味性賦与の試み──『最後のユニコーン』における矛盾撞着と曖昧性”を新規公開中


作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス




大学祭英文学科公開授業のお知らせ

英文学科学園祭公開授業
The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
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 11月5日(土)、11月6日(日)の両日開催
 午後1時より3時まで

 アニメーション映画を上映しながら、テーマの解説を行います。


 The Last Unicorn―映画化の最新情報

 1982年のアニメーション版は日本では未公開だが、欧米では熱狂的ファンも多い。“アメリカ”の主題歌が今また話題になっている。
 2005年公開予定で製作進行中の実写版は、今世界中のホームページで注目を浴びている。


 11月5日、土曜日の内容
 1 ユニコーンとは―伝説に語り伝えられたユニコーン
 A ローマの博物学者プリニウスの「博物誌」の記述

Pliny describes the unicorn as being very ferocious, similar in the rest of its body to a horse, with the head of a deer, the feet of an elephant, the tail of a bear; a deep, bellowing voice, and a single black horn, two cubits in length
 プリニウスによれば、ユニコーンはとても獰猛で、身体そのものは馬と同様だが、頭は鹿のようで、足は象のようで、尾は熊のようで、唸る声はとても重々しく、2キュービットの長さの黒い角を持っているということだ。

 ユニコーンとは様々の動物の組み合わせ、“キメラ”(chimera)にも似た存在であった。

 B タペストリーに描かれたユニコーン

 クリュニー美術館所蔵のタペストリー―“貴婦人とユニコーン”
 メトロポリタン美術館所蔵のタペストリー“クロイスターズ・ユニコーン”
 タペストリーの中に描かれたユニコーンとは、中世的“アレゴリー”の寓諭的意味を背負っているものであった。

 C 聖書の記述―申命記とヨブ記に記載のある“reem”と呼ばれる動物

 ユニコーンと彼女の宿敵である牡牛との関係

 蝶の言葉

His firstling bull has majesty, and his horns are the horns of a wild ox. With them he shall push the peoples, all of them, to the ends of the earth.
--
You can find your people if you are brave. They passed down all the roads long ago, and the Red Bull ran close behind them and covered their footprints.


 11月6日、日曜日の内容
 『最後のユニコーン』のユニコーンは、従来の言い伝えとは全く異なる存在属性を与えられている。
 ユニコーンを語る独特の描写と比喩の用法

A
She was very old, though she did not know it, and she was no longer the careless color of sea foam, but rather the color of snow falling on a moonlit night.
彼女は、自分では知らなかったけれど、とても年とっていた。そして彼女はもう海の泡のような無邪気な白い色ではなく、月の照らす晩に降る雪のような白い色をしていた。

B
But her eyes were still clear and unwearied, and she still moved like a shadow on the sea.
けれどもユニコーンの目はまだ透き通っていて疲れを知らず、彼女は 海の上の影のように身体を運びました。

C
She did not look anything like a horned horse, as unicorns are often pictured, being smaller and cloven-hoofed, and possessing that oldest, wildest grace that horses have never had, that deer have only in a shy, thin imitation and goats in dancing mockery.
彼女はユニコーンがしばしば絵に描かれていたように、角のついた馬のような姿はしていなかった。体は馬よりも小さく、蹄は二つに割れていて、馬が決して所有したことのない、そして鹿はただ薄っぺらなおずおずとした物真似でしか所有したことがなく、そして山羊はおどけて踊るような形でしか持っていない“オールド”で“ワイルド”な優美さを備えていた。


アンチファンタシー研究プロジェクト

 書籍として出版された研究書・注釈書とインターネットで一般に公開中のテキスト、研究資料が連動している


『ピーターとウェンディ』と『最後のユニコーン』について考察した研究書:

 『アンチ・ファンタシーというファンタシー』

 “アンチ・ファンタシー”というキーワードからファンタシーの本質に迫る

キーワード別に主題を解説した注釈テキスト:

 Annotated Last Unicorn

 様々の文学作品や流行歌からの引用を解説
 テーマを解析するためのキーワード、“old”、“time”、“magic”など




インターネットで公開中の様々な関連データ
 ホームページ “Fantasy as Antifantasy”
 http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

 ブログ “Fantasy as Antifantasy Daily Lecture”
 ―The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ
 http://antifantasy2.blog01.linkclub.jp/

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