Archive for 15 November 2005

15 November

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 411


"He has not fared so badly," the magician answered. "Great heroes need great sorrows and burdens, or half their greatness goes unnoticed. It is all part of the fairy tale."

「彼はそれほど悪い目を見た訳ではない。」魔法使いは答えました。「偉大な英雄というものは、深い悲しみと重荷を必要とするものだ。そうでなければ彼等の偉大さの半分は、見過ごされてしまうことだろう。これもまた、お伽話の一部として欠かせないものなのだ。」

 英雄としてのリアの運命について語る、シュメンドリックの言葉である。キーワード“story”に関連する。全ての英雄を創出する条件として欠かせない悲哀と重荷も、出鱈目でしかもとりとめのない、お伽噺を完成する材料の一部に過ぎない。あるいはいかなる重大で深刻な経験も、一つのお話として完結する枠組みを持つことがなければ、単なる愚劣な事象の一つ一つでしかない。そしてまた当人の耐えられない程の苦難も、お話の鑑賞者にとっては一つの悲劇あるいは喜劇を形成する要素の一部でしかない。

用語メモ
 greatness(偉大さ):“崇高”と連接する運命的な深みを持つ意義性である。お話としての完結性から遊離した時、全ての事柄が瑣末で、矮小で、卑近なものとなる。“あるがままの自然”には結局のところ感動も、得心も、完結した意味さえもないのである。


お願い
 “『最後のユニコーン』読解メモ”は、次回の第412回をもって終了の予定です。
 これまで解説されていた部分についての疑問、あるいは言及されていなかった箇所についての質問等がありましたら、どうかお知らせ下さい。総集編で補完したいと思います。その他リクエスト等ありましたらご遠慮なくお寄せ下さい。


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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中

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