Archive for 16 November 2005

16 November

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 412


When he caught his breath again, he began to sing, and she joined with him. And this is what they sang as they went away together, out of this story and into another.

シュメンドリックは息をつぐと、歌を歌い始めました。そしてモリーもそれに加わりました。そして彼等がこのお話から次のお話へと旅立つ時に歌った歌は、次のようなものでした。

 キーワード“story”と関連する。“out of this story and into another”の部分には、別のもう一つの仮構世界が言及されているかのように見える。しかしこの“次のお話”の“another story”は、果たして本当に我々が今読み終えつつあるこの物語とは別個の、独立した物語であるのだろうか?あるいはここに語られている“別の物語”は、この物語の内部において語られた“仮構内仮構”に過ぎないのだろうか?“another”つまり“次の物語”に遷移する前にこの物語が語る“この物語”とはどこまでなのだろうか?“another”はこのお話に含まれてはいないのか?結局この物語のここでの記述は、事実に反する虚偽を述べたものということになるのだろうか?

用語メモ
 自己言及(self reference):自らについて語る言説を行う際には、その証言の真偽は予想外の微妙な拘束を受けることとなる。直観と厳密な論理の間にはかなり大きな開きがある。そういう訳で、筆者は決して自己言及を行うことはするまいと決心したのである。


 “『最後のユニコーン』読解メモ”は、今回をもって終了です。
 これまで解説されていた部分についての疑問、あるいは言及されていなかった箇所についての質問等がありましたら、どうかお知らせ下さい。随時解説をいたします。
 明日より“Peter and Wendy『ピーターとウェンディ』読解メモ”をスタートします。


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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中

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