Archive for 22 November 2005

22 November

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 6

For a week or two after Wendy came it was doubtful whether they would be able to keep her, as she was another mouth to feed. Mr. Darling was frightfully proud of her, but he was very honourable, and he sat on the edge of Mrs. Darling's bed, holding her hand and calculating expenses, while she looked at him imploringly. She wanted to risk it, come what might, but that was not his way; his way was with a pencil and a piece of paper, and if she confused him with suggestions he had to begin at the beginning again.

 ウェンディが生まれて一週間か2週間経った頃、この赤ちゃんを養っていくことができるのかどうかが怪しくなってきました。なにしろ食べさせていかねばならない家族がもう一人増えたのですから。ダーリング氏はこの子のことをとても誇りに思っていました。でも彼はとても世間体を気にかける質でしたので、お母さんのベッドの縁に腰を降ろして、お母さんの手を握りながら、出費の計算を始めました。ダーリング夫人は祈るような顔つきでお父さんの姿を見つめていました。お母さんは何が何でもやってみるつもりでした。でもお父さんのやり方はそうではありません。ダーリング氏のやり方は紙と鉛筆を使って、きちんと計算するのでした。お母さんが横から口を出して混乱させてしまうと、お父さんはまた最初からやり直しをしなくてはなりませんでした。

 しっかり計算をして、子供を養っていけるかどうか確かめる両親の様子である(子供が生まれた後に)。いかにも立派な銀行員らしいやり方なのだろう。ナンセンスの一例であり、またantifantasyの具体例として数えることも出来る場面である。ナンセンスは思想的にはfantasyと敵対する部分を持つこともあるが、既存の崇高と尊厳に対して揶揄的な様態を装い、意味性の崩壊と価値観の転倒をも存在原理の一つとして積極的に包含する力動的な機構をも備えてもいる点で、ファンタシー文学を成立させる強力な要素の一つとなることも時としてあり得る。

用語メモ
 honourable:“honour”とは「誇り」、「名誉」のことだから、その形容詞形であるこの言葉は「誇り高い」、「立派な」と訳せる筈だが、ここでは「世間体を気にかける」という俗っぽい感覚に対して摘要されているものであろう。


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