Archive for 24 November 2005

24 November

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 8

"Remember mumps," he warned her almost threateningly, and off he went again. "Mumps one pound, that is what I have put down, but I daresay it will be more like thirty shillings -- don't speak -- measles one five, German measles half a guinea, makes two fifteen six -- don't waggle your finger -- whooping-cough, say fifteen shillings" -- and so on it went, and it added up differently each time; but at last Wendy just got through, with mumps reduced to twelve six, and the two kinds of measles treated as one.

「おたふくかぜを忘れちゃいけないよ。」お父さんは脅すような口調で厳しく言いました。そして計算をまた続けました。「おたふくかぜに1ポンドと、さっきはそれで計算してたが、やはり30シリングはかかるだろうな。黙って。はしかは15シリングだ。風疹には半ギニーかかる。合計して2ポンド15シリング6ペンス。指を振るのは止めておくれ。百日咳と、15シリングだ。」こんな風に計算は続きました。そしてやり直す度に計算の結果は異なるのでした。けれどもどうにかウェンディは切り抜けることができました。おたふくかぜを12シリング6ペンスで勘定して、はしかと風疹は二つまとめて一つ分として計算したおかげでした。

mumps:おたふくかぜ
measles:はしか
german measles:風疹
whooping cough:百日咳

 子供が罹るであろう病気が総て一意的に金額に換算されてしまう、という一方的な経済的価値観である。風刺的であるとして読み取るより、観念世界の一つの可能性として読み取る方が面白いかもしれない。けれども実は、19世紀末から20世紀初めの、ロンドンにおける伝染病の蔓延と乳幼児死亡率の高さという、当時の社会状況が反映されてもいるのである。幼くして他界した子供たちは、ネヴァランドのピーターの仲間達、ロスト・ボーイズという存在を構想するヒントとなったと思われる。

用語メモ
 ギニー(guinea):1663年から1813年までに英国で鋳造された金貨である。当初は20シリングから22シリングに相当したが、1717年以降は21シリングに統一された。弁護士や医師などに対する謝礼や、公共団体に対する寄付、あるいは絵画・競走馬・地所等の値段をあらわす通貨単位として用いられたのである。半ギニーは10シリング6ペンスということになる。

表をご覧下さい
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