Archive for 07 November 2005

07 November

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 403


"And there will be a princess, in time--either fleeing her unspeakably wicked father and brothers, or seeking justice for them. Perhaps you will hear of her, shut away in a fortress of flint and adamant, her only companion a compassionate spider--"

「そしてまもなく、一人のお姫様が姿を現すことでしょう。どうしようもないほど悪どい父親と兄弟達のもとから逃げ出して来たか、あるいは彼女の哀れな兄弟達を救ってもらうことを求めて。あるいはこのお姫さまのことを耳にはさむことになるかもしれません。火打石と金剛石で出来た牢獄に閉じ込められて、心を慰めてくれるのは同情心に富む蜘蛛一匹であるとか、など。」

シュメンドリックがリアに語った予言の言葉である。その内容はこの後まもなく実現することとなる。お話の将来を予見するという点では、キーワード“story”とも関連し、ステレオタイプ的なお伽話とロマンスの展開を作中人物が自覚して語る点においては、キーワード“antifantasy”の暗示する諧謔的効果にも繋がる。

用語メモ
 お伽話(fairytale):今進行しつつあるこのお話が一つの他愛のない“お話”に過ぎないこと、このお話を読み進めつつある自分自身とその意識を包含する全体としての世界も、認識の過程においてはやはりある種の“お話”として構築されたものに相違ないこと、これら全てに対する反射的自覚が“お伽話”を完結した一世界として成立させる条件の基本軸としてある。


お願い
 “『最後のユニコーン』読解メモ”は、この第14章をもって間もなく終了となります。
 これまで解説されていた部分についての疑問、あるいは言及されていなかった箇所についての質問等がありましたら、どうかお知らせ下さい。総集編で補完したいと思います。その他リクエスト等ありましたらご遠慮なくお寄せ下さい。


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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中


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