Archive for 13 December 2005

13 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 27


 But Wendy had not been dreaming, as the very next night showed, the night on which the extraordinary adventures of these children may be said to have begun.
 On the night we speak of all the children were once more in bed. It happened to be Nana's evening off, and Mrs. Darling had bathed them and sung to them till one by one they had let go her hand and slid away into the land of sleep.
 All were looking so safe and cosy that she smiled at her fears now and sat down tranquilly by the fire to sew.
 It was something for Michael, who on his birthday was getting into shirts. The fire was warm, however, and the nursery dimly lit by three night-lights and presently the sewing lay on Mrs. Darlingユs lap. Then her head nodded, oh, so gracefully. She was asleep. Look at the four of them, Wendy and Michael over there, John here, and Mrs. Darling by the fire. There should have been a fourth night-light.

 けれども翌日の晩はっきりと分かったように、ウェンディは夢を見ていたのではありませんでした。この晩こそダーリング家の子供達の不思議な冒険の始まりとなったのでした。
 この日の晩、子供達はみんな床についていました。その日は丁度ナナが晩にお休みを頂くことになっていました。ですからダーリング夫人が子供達をお風呂にいれ、枕元で歌を歌って、子供達が一人一人お母さんに握ってもらっていた手を離し、眠りの世界に旅立つまで付き添ってあげていたのです。
 全てが安全で、居心地良さそうに思えました。ダーリング夫人はこれまでの心配をすっかりと忘れて、落ち着いて暖炉の脇に腰を掛け、縫い物を始めました。
 縫っているのはマイケルに着せるものでした。マイケルは今度の誕生日を迎えたら、シャツを着せる予定になっていたのです。けれども暖炉の火は暖かく、子供部屋を照らす3本の蝋燭は薄暗く、いつの間にかお母さんは縫い物を膝の上に置いてしまっていました。それからお母さんの頭はとってもやさしく、垂れてきました。お母さんは眠りに落ちたのです。四人の姿を御覧になってみて下さい。あちらにウェンディとマイケル、こちらにジョン、そしてダーリング夫人は暖炉の横です。もう一本蝋燭を灯しておくべきでした。

 お話の話者の語り口に従えば、これから起るはずの出来事が、既知の事柄として処理されていることが分かる。お伽話の常套が、因果関係の逆転、過去と未来の時間軸の混淆として、観念遊戯的側面を強調されて再現されることとなるのである。これは後にはモダニズムの作品世界提示の手法として多用された技法ではあるが、むしろ伝統的な語りの手法の巧みな展開例であると同時に、実在世界の記述方法の革新を企図して意識的に導入された、新規の視点でもまたある。

用語メモ
 語り手(narrator):我々が読みつつあるこのお話は、架空の語り手が語りつつある口承の物語である、という架空の一要素が賦与されているのである。



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連絡先 047ー371ー1375
english@wayo.ac.jp




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