Archive for 14 December 2005

14 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 28


While she slept she had a dream. She dreamt that the Neverland had come too near and that a strange boy had broken through from it. He did not alarm her, for she thought she had seen him before in the faces of many women who have no children. Perhaps he is to be found in the faces of some mothers also. But in her dream he had rent the film that obscures the Neverland, and she saw Wendy and John and Michael peeping through the gap.
The dream by itself would have been a trifle, but while she was dreaming the window of the nursery blew open, and a boy did drop on the floor. He was accompanied by a strange light, no bigger than your fist, which darted about the room like a living thing and I think it must have been this light that wakened Mrs. Darling.

 ダーリング夫人は、眠りに落ちている間に夢を見ました。そこではネバー・ランドがとても身近に迫っていて、見たことのない少年が飛び出してきました。この子の姿を見ても、お母さんは驚きはしませんでした。何故ならば、お母さんはこの子の顔を子供のいない沢山の女の人達の顔の上に見つけたことがあるような気がしたからです。何人かのお母さん達の顔の上にも、この子の姿は見ることができたでしょう。けれどもダーリング夫人の夢の中では、この少年はネバー・ランドを覆って中を見えにくくしている薄膜を突き破ってしまっていました。そしてその裂け目から、ウェンディとジョンとマイケルが顔を覗かせているのが見えたのです。
 この夢だけなら、どうということもなかったでしょう。けれどもその夢の最中に、子供部屋の窓がいきなり開いて、一人の少年が床に降り立ちました。彼の傍らには、不思議な灯りが寄り添っていました。それは人の拳ほどの大きさしかなく、生き物のように部屋の中を飛び回っていました。私は思うのですが、この灯りのおかげでダーリング夫人が目を醒ましたのに違いありません。

 ピーターの存在に関わる謎が語られている部分である。夢の中において、お母さんと子供たちとピーターのそれぞれの意識の重合部分が、ネバー・ランドとして顕現するのである。そしてまた、ピーターは心の中の一人格でもあるし、同時に人の顔の上に浮かんだ表情でもある。

用語メモ
 film(薄膜):ネバー・ランドを覆ってその姿を隠しているという、そしてピーターがこれを突き破って出て来ることができるという、この“film”の正体は何なのだろう?




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